【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ39)

今日:11 hit、昨日:4 hit、合計:180,183 hit

38.ほらねページ39

「もう一度、きあいだま」
じこさいせいをする余裕もない。必死に当てたげんきだま二発は流石に効いたようだ。
フーディンの体力とジュラルドンの強さを天秤にかけると、じこさいせいしてギリギリ勝つか負けるか……。
「もう一度！キョダイゲンスイだ！」
「耐えて！」
荒れ狂う砂嵐。最初に受けたステルスロック。今に来てじわりじわりと効いてくる。当然、チャレンジャーにとっては最後の難関になるはずだ。

「馬鹿だと自分でも思うけれど、どうしてもこれで終わらせたいの。わかってるんだけれど」
Aは砂嵐の向こうのキバナを見つめる。
ロクに相手も見えない砂嵐の中で、2人の口の端がニヤリと持ち上がった。
「ジュラルドン！」
「フーディン！」
同時に指示を出す。あとは、どちらが先に倒れるかどうか。
「キョダイゲンスイ！」
「サイコキネシス！」

より一層砂嵐が激しくなって、目が開けられない。
エネルギーがぶつかり合い、大きな衝撃を生み出す。

ふっと、砂嵐が弱まる。立っていたのは、ジュラルドンだ。

.

「現役だったら負けていたかもな！」
キバナはAに声をかける。
疲れたのか、気が緩んだのか、Aはその場に崩れるように座り込んだ。
「おーい、大丈夫か？」
「……ゲンガーで私がどうやって戦ったか、もう忘れた？」
Aが顔を上げる。その目はまだ、冷静に事態を見据えていた。

フーディンが地に伏したまま片手を挙げる。その手が紫色の力を纏った。
「ジュラルドン、ドラゴンクロー！」
指示を出した刹那、何かがキバナの横を通り抜ける。
あれは、じしんで壊れた破片。そう思った時には事態が逆転した。
「……ほらね」

みらいよちのダメージがジュラルドンに入る。
ジュラルドンが倒れるのと、フーディンの手が落ちるのとはほぼ同時だった。
「引き分けかなぁ」
声を聞いてAを見る。いつもの柔らかな表情に戻っている。…これ以上の手はなさそうだ。
そんな彼女につられて、キバナもふっと表情を緩めた。

.

2人のトレーナーは、健闘した相棒を労ってボールに戻した。
「…で。後片付けはちゃんとしないとね」
じしん、なみのり、キョダイマックスに天候変化。オフシーズンのスタジアムがめちゃくちゃになるには十分だ。
「ああ、リーグスタッフの大変さを体験するとするよ」
「あとでシャワールームも借りなきゃね」
ぼろぼろになったお互いを見て、何だか可笑しくて笑った。