【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ20)

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19.不機嫌ページ20

「……」
数日ぶりにAに会うと、今日はなんだかむすっと不機嫌でいる。
目の前にいるAはふくれ面で抹茶ラテのストローをくるくる回す。……そういう顔もするんだな、と思いながらキバナは苦笑気味に見つめた。

「なぁ、何で今日そんなに怒ってるんだ？」
「別に……何でもないです」
明らかになんでもないことはなさそうだ。
「……最近、変わったことってあります？」
つんけんとしたままAが言う。
「変わったこと？自撮りを上げるのは減ったかもな」
「ジムリーダーなら間で噂になってる話、知ってます？」
Aがちらりとキバナを見た。なにかご不満らしい。
「噂？」
知らない反応をするキバナをAはジトーっとした目で見る。

「……キバナさんに……………んじゃないかって」
「すまない、もう一回聞いて良いか？」
Aはそっぽを向いてゴニョゴニョしている。ゴニョニョでもここまで小声になることはないんじゃなかろうか。
「……キバナさんに！彼女ができたんじゃないかって他のジムリーダーが噂してるんです！！」
思いがけない話が飛んできて、キバナは入ってはいけない方にコーヒーがいきそうになるのを感じた。
すんでのところで醜態を晒すことなくコーヒーを飲み込む。相変わらずAの感情は表情からは窺えない。

「……なるほどな」
定期的に会っている人物は1人しかいない。そのような噂を向けられても、存外嫌ではないな、とキバナは考えた。うん、嫌じゃない。
「私、仕事が落ち着いてる時にネズさんのライブ行くのがほんっっっと楽しみなんです！なのに噂されてるって！ライブ！行きにくくなるじゃないですか！！」
……嫌ではないと思っているのはキバナだけらしい。

「それは…悪かったな」
「噂されてるキバナさんの方が風評被害アレなのかなって思うので私は良いです…」
くるくると回された抹茶ラテのグラスが汗をかいている。ふと、大事なことを確認していないのに気づいて、キバナは口を開いた。
「そういえばAは恋人はいるのか？」
「いませんよ、いたら会ってませんよ」
なるほど、良かった。うん？良かった？
「まぁそうだよなぁ～」
「キバナさんにも恋人はいなさそうで。まーあネズさんと話したことありませんから。ライブはライブで楽しんできます。ちょっと物申したかっただけなので」
「わかったわかった、気をつける」
言い返すくらいの元気は戻ったらしく、Aはそう言って笑った。