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16.レポートを書いて ページ17

「キバナさん……キバナ…」
カレーをぐるぐる混ぜながらAは呟いた。
たまにはキャンプも良いだろうと、ポケモンたちと鍋を囲む。
「サーナイト、何か覚えてない? 」
お皿の用意をする彼女に声をかけると、サーナイトは聡明な目で見つめ返した。
ラルトスは人の感情を読み取る。キルリアはトレーナーの喜びを表現する。……サーナイトもAの心を読んでいるのかもしれない……なんて。

「よし、カレーは良い感じかな。お米はもう少し蒸らしたいから、まだ触っちゃダメだからね、オッケー? 」
ルカリオとカイリキーがソーナンスの監視をするのを見て、スマホロトムを呼び出す。

多くのトレーナーがそうあるように、Aもレポートを残していた。だがどれもポケモンのこと、バトルのこと。
バトルをしたトレーナーの癖はレポートを読まずとも覚えている。ただ、そこにいた自分だけが、ぽっかりと思い出せない。

Aは蒸らしている米の様子をちらりと見てから、電話をかけた。

「……お久しぶりです、マグノリア博士」
目をそらしてしまいそうになる。そんなAを、マグノリアはまっすぐ見つめていた。
初めて会った時から少し小さくなったようにも思うが、その威厳は変わらない。
「ええ、本当に。あの子たちのことですか? 」
「いえ、まだ……合わせる顔がありませんから。その……あの子たちを博士にお願いした時のことを、伺いたくて。恥ずかしながら、思い出せないもので」
マグノリアは驚くこともなく口を開く。

「あの時の貴女は、道に迷った子供のようでしたよ。今はもう、道を見つけたようですけれどね」
「そうでしょうか」
「ええ、もうすぐあの子たちを迎えに来てあげられるんじゃありませんか? ……それと、お米もそろそろ良い具合だと思いますよ」
マグノリアがふっと頰を緩めて言う。
振り返るとフライゴンが鍋を覗き込んで嬉しそうに尾を振っていた。
「大切にしてくれていて何よりです」
「すみません、お見苦しいところを……ありがとうございました。失礼します」

カレーを待ちわびるポケモンたちに急かされて鍋の元へ向かう。
準備をしているとポケモン同士がじゃれ合うのが見えた。
その刹那、ひきつれるような痛みが胸に走る。
「今の」ポケモンたちも好きだ。すごく大切だ。……大切だ。
「……もうすぐ、思い出せるのかな」
今に重なる過去を傍にやって、カレーを運んだ。

17.観察眼→←15.オマエは変わらない



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設定タグ:ポケモン剣盾 , ポケモン , キバナ   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:あくびさん | 作成日時:2020年8月9日 17時

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