【ポケモン剣盾】日陰のポケモントレーナー (ページ13)

今日:21 hit、昨日:4 hit、合計:180,193 hit

12.逡巡ページ13

シャワーを浴びて、ベッドにごろんと横たわると、すーっとスマホロトムが飛んできた。
『メッセージが来てるロト～！』
ロトムをつんつんと触ってメッセージを表示する。ルリナだ。

ルリナその……さっきは試すようなことをしてごめんなさい。
ルリナ確認してみたんだけど、貴女に連絡先を送ってって言われたから送るわね

そんな発言の後ろに、知らないIDが貼られている。
文字列の中に「241」を見つけて、ほーらね、と苦笑した。

A気にしないで、ルリナ。すぐに分かったし。連絡どうするかかんがえるね、ありがとう。

さらさらと返事を返して、スマホロトムの画面を切る。
「……思春期の子供じゃないんだから、不器用だなぁ」
「241」の入ったIDを眺めて、しばし逡巡する。

しばらくキバナがポケモンバトルを挑んでくることはないだろう。
彼は闘争心の塊だが、分析力もある。熱だけではなく、クールな一面もある。それは、彼のライバル(ダンデ)と同じだ。
拒絶されて、それでも人伝に連絡を取ろうとするのは、恐らくは罪悪感が、あるいはノスタルジーか。

「……私も大人気なかったもんなぁ」
ダンデのライバルで、最難関のジムリーダーを睨む人なんて、このガラルにほとんどいないのではないかと思う。

「……嫌い、ポケモンバトルなんて」
枕を抱きしめながら、Aは小さくつぶやいた。
ポケモンは好き。ポケモンバトルは嫌い。
……ポケモンバトルなんて、嫌い。

ハイカカオのチョコレートを舌に落としたように、苦味が胸の真ん中にしん、と広がる。
敗北の味。これからどこに向かえば良いかわからない迷子のような気持ち。
渋くて苦い感情……それは覚えているのに、どうやって負けたのか、どんな景色だったのか、思い出せない。

「…………話を聞くだけなら、良いかな。私も謝らなきゃいけないし、何か、思い出せるかもしれないし」
仕事を思えば親しくならない方が良いのかもしれない。しかし、もう気づかれてしまっているならどうしようもあるまい。

Aこんばんは、Aです。Aルリナから連絡先が送られてきたので、メッセージを送りました。
A今日は、すみませんでした。それでは、おやすみなさい。

なんだか気まずくて、まだ11時にもなっていないが、電気を消した。