ここはロマンス大通り【ars】 (ページ1)

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■大学生二宮の憂鬱ページ1

初めて会ったのは、クロの散歩から帰ってきた時。

パーカーの中にクロを入れてマンションの中に入ったら、知らないオンナノコに声を掛けられた。

「私、今日越してきました。天野Aです」
「うん、どうも」
「よろしくお願いします」
「うん、よろしく」

その時は、まぁ別に。
ご近所さんに若い子が増えた、くらいで。
それだけ。

.....うそ。

ちょーぉぉっとだけタイプじゃんって思った。
ちょーぉぉっとだけ、ね。

次に会ったのは、いつだっけ。

確か学校帰り。
マンションの前で鉢合わせて...それで、あぁ、ミントガムあげたんだ。

そしたら、エレベーターが閉まる瞬間に何かすげぇ勢いでガムのお礼を言われた。
ガムごときで。
おもしれぇ奴、って思ってドアが閉まったエレベーターの中で1人爆笑したっけ。

それでー...あ、クロ失踪事件の時だ。

買い物する間、ほんの5分程度クロを店の前に繋いでたら居なくなっちゃってたあの日。

超焦って、その辺探したけど見つかんなくて、泣きそうになるのを必死で堪えて潤くんトコに行った。

そしたら、何故かアイツもそこに居て

「えっ！？あの子、居なくなっちゃったの！？」

って、めっちゃ不安そうな顔して叫んだ。

ビックリしたけど、潤くん以外の知ってる顔があった事に妙にホッとして

雅紀がクロを保護して交番に連れてきてくれた時にも「良かったですね！二宮さん！」ってまた大声。

雅紀のせいでクロの本名がクロワッサンって事もバレたし、よく考えたら泣きそうになってる情けない姿も見られたし...ちょっと気まずいなんて思ってたけど

一緒にマンションまで帰る途中

「ご主人様に会えて良かったねぇ」

クロに話しかけるアイツの顔が、すげぇ優しくて...ドキッとしちゃって。
何となく、ドゥパレは父ちゃんの設計だって事とかオレが設計士を目指してる事とかまで話しちゃって。

ちょっと喋り過ぎたかなぁ...って後悔したのは、部屋に戻ってから。

ソファでクッション抱えて「あー...」って唸ってるオレの頬をクロが舐めた。

そうだ。
あの時か。

オレが初めてアイツを「A」って呼んだの。

もう少し距離を縮めたいって思ったからだなんて、Aには絶対言えないけど。

だから何でも無い顔して呼んだけど、本当はちょっと緊張してたんだ。

でもその頃はまだ、気付いてなかった。

自分の気持ち。

久々にオンナノコの友達が出来て、オレってばウキウキしちゃってんだなーって思ってた。