ここはロマンス大通り【ars】 (ページ9)

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■あなたはヒーローページ9

この町の好きなトコ。

駅前が、駅前なのにうるさくないトコ。

その駅前にある、何年物か分からないノッポな時計。

『ロマンス大通り』ってダサい名前。

『ロマドー』ってゆー通称も、どっかダサイってトコ。

ロマドーの入り口近くにある、大きな一本の桜の樹。

桜の樹の前にある、交番。

交番の前に、運が良ければ立ってる

「おはよ、ポリ潤！」
「だーかーらーその呼び方...ハハッ、おはよ」

お巡りさんの、通称『ポリ潤』。

私がこの町で、一番好きなのは...潤さん。

通う事になった女子校が、ロマドーの先にある。

それまではこの町に来た事すら無かった。

本当はせっかく高校生になるのに女子校なんて行ったら恋愛も出来ないんじゃないの！？
共学で楽しいアオハルを過ごしたいのに！って思ってたけど、お母さんに「私の母校に絶対行って欲しい」なんて半ば無理やり...

お父さんに「お母さんに何とか言って！」って頼んでも「女子校なら安心だなぁ」なんて言われて、渋々決めた学校だったけど。

入学式の日、交番の前に咲く満開の桜を見上げてるお巡りさんを見た瞬間に

私、この学校に来る運命だったんだ...って思ったんだ。

その横顔は、嘘みたいに綺麗で

漫画みたいに完璧な角度で上がった口角は、見惚れない人なんていないんじゃないかなって思った。

ハラハラと落ちて来た花びらを掌で受けた彼が、それを見詰めて微笑んだ時

一目惚れなんて、自分に起こるとは思ってなかった事に簡単に堕ちたんだ。

それからずっと。

三年生になった今もずっと。

私は潤さんが好きで、交番の前に潤さんが立ってるかどうか毎日ドキドキしてる。

交番に寄りたくて落し物を探して歩いてるから、よく人にぶつかってた。

潤さんが『ポリ潤』って呼ばれてるのを知って、顔馴染みになった頃に思い切って「ポリ潤ー！」ってフザけた振りして呼んだら、「こら！」って笑ってくれた。

泣きそうだった。

ってゆーかきっと、あの時私は泣いてた。

「ポリ潤って本名は何？」

そう訊いたのは、私の精一杯の勇気。

「松本潤だよ」

潤さんに教えて貰ったその名前は、私の宝物になった。

綺麗な名前。
潤さんにピッタリだね。

本当はそう言いたかったのに、私は

「でもやっぱりポリ潤だよね！」

結局フザけちゃって。

潤さんは

「あんまり馬鹿にしてると逮捕すんぞ？」

意地悪な顔して笑った。