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Scene6 -4 ページ4
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ずいぶんとこの部屋には通い詰めた。
二宮先生に腕を引かれるままやってきた保健室。
今日は当たり前に全部のベッドが空いている。
独特な薬品みたいな匂いが、しばらく来ていなかっただけで妙な懐かしさで胸に染み込む。
「ほら座れ」
「私に何か用ですか」
「用が無きゃ呼んじゃだめかよ…好きなやつ」
「っ」
びくりと肩が跳ねたのを見つけた二宮先生が「くく」と喉で笑った。
ぎいと音を鳴らしていつもの椅子に座り込む。
「ほら座れ、A」
「……うん」
別れてからも二宮先生はほかに誰もいない場所では私を名前で呼んだ。
それは二宮先生らしい配慮で、それでいて二宮先生らしい強引さだった。
少しだけ胸に響く。
小さな棘みたいになって、私を呼ぶ声が胸を痛める。
「変ことはしねぇよ。渡したいものがあるだけ」
「渡したいもの…？」
ぽすんといつものベッドに腰を下ろす。
二宮先生の好意を知ってからわかったことだけど、二宮先生は私をひどく特別扱いしてくれていた。
それは付き合う前も、後も。
いつだって一番奥のベッドを空けて。
私がさぼりに来ると話し相手をしてくれて。
本当に体調が悪いぎいときは椅子を鳴らしながらキャスターを転がしてベッドの傍まできて、眠るまで傍にいてくれた。
意地悪もたくさん言われたし、ちょっかいもたくさんかけられたし。
それを忘れたわけじゃないけど。
その裏にあったものを知ってしまったらもう、二宮先生を天敵だなんて思うことはできない。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月6日 16時
