Scene4 -7 ページ27
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どうして似合わないなんて言うのかって聞きたい私の心を、「放っておけない」愚かな性で覆い隠した。
「先生、傘ないんですか」
「彼女が持ってなかったからあげた」
櫻井先生は優しい人だ。
放っておけないから、傘の一つでも差し掛けてあげたくなるのかもしれない。
「また振られちゃったよ」
茶化すような声色は傷つかないためだと知っている。
大人の複雑な心中は正確に推し量ることなんてできない。
だけど大人が思うより子供というのも複雑な気持ちを抱えながらなんとか日々を取り繕っている。
だから私にだってわかる。
先生は今、大丈夫じゃない。
「二宮先生がまたダメ女に引っ掛かってるって言ってました」
「…ニノのやつ、よりによってなんでお前にそんなこと言うかな…」
小さくごちて、櫻井先生は弱弱しく口元を持ち上げる。
「そうだね、ダメな女の子だったよ。わかってたけど……わかってるけど…放っておけないんだよ、あぁいう女の子」
私と先生は似ている。
そうして気が付く。
私が櫻井先生を好きだと思ったのは、同じ愚かさを可哀そうだと思ったからなんだと。
愚かな私を、櫻井先生は可哀そうだと思ってくれるかもしれないと期待したのだと。
「……先生は、私と似てますね」
「そうか？俺はお前みたいに不真面目じゃないぞ」
「そうですよ、全然似てません」
「言ってることが真逆じゃねぇか」
からりと先生が笑う。
少しでいいから、先生が私の言葉で笑ってくれるのが嬉しかった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年5月17日 15時
