remember 15 ページ17
「藤木くん…と、島くん?」
「ジャービスか」
「なんっで、お前谷町のことは覚えるくせに俺のことは覚えてねぇんだよ!」
デュエル部、部室前。遊作がブルーエンジェルの正体である財前葵と接触を試みるために追いかけた先がここへと繋がっていた。Aは遊作の顔を見るとぱぁ、と目を輝かせて遊作の手を取った。
「藤木くん、デュエル部に来てくれたんだね。うれしい」
「いや、俺は……」
「谷町!こいつはLINK VRAINSに全く興味ナッシングな野郎であって、大体お前のような奴が来るところじゃねぇんだよ!」
島が声を上げると、部長がそれを割って入る。部長が入って入ってと彼に有無を言わさず部室へと戻っていけば、Aが遊作の腕を引いて彼を中へと引き寄せた。
「葵ちゃん、新入部員の藤木くん!」
「……そう」
「新しい仲間が増えるってうれしいね」
にこにこと微笑むAに葵はそれ以上何かを言うのはやめて、遊作の方に話を持ちかけた。彼女を追いかけてきたのは確かだが、まさかこんなことになるとは思わなかった。遊作は大きなため息をつこうとして、飲み込む。ダミーのデッキを葵に渡しながら、相変わらず調子の狂う笑顔を向けてくるAに力が抜けた。
「藤木くんが来てくれて私うれしいな。前にも言った通り、私は藤木くんが来てくれるとこの部も、もっと楽しくなると思う」
微笑んだAに遊作は、息が詰まる。こんなふうに自分だけを見つめて嬉しいだなんて言葉は、言われ慣れてない遊作にとって、居た堪れない気持ちになる。自分に向けられる好意、温情。必要のないと侮蔑して遠ざけてたものに触れてしまった。それは遊作をムズムズと落ち着かない気持ちへと導く。
「別にお前のために来たわけじゃない」
「うん、それでもうれしい。藤木くんともっと仲良くなりたいから」
あぁ、まただ。こいつの言葉に耳を傾けるとペースが乱れていく。優しさや人との関わりは全て遠ざけてきたはずなのに、こいつはそれを押しのけて近づいてくる。遊作は高鳴る胸に不思議と嫌な気はしなかった。
「藤木くん、今度一緒にカード見に行こうね」
「……」
デッキを見たAがいつものように彼に語りかけると、彼もまた黙ってそっぽを向く。
事情があるとは言え、素直な彼女に嘘をついてしまった気分に遊作は後ろめたさを感じて目を逸らした。
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暁(プロフ) - とても面白いです!!次の更新楽しみにしています!! (2019年10月8日 12時) (レス) id: dd077ce83e (このIDを非表示/違反報告)
はな - 続き読みたいです!面白かったです (2019年4月16日 1時) (レス) id: 87d0cab806 (このIDを非表示/違反報告)
ヒナコ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!頑張れ〜恋愛一年生、遊作! (2019年4月6日 21時) (レス) id: c6a15fa920 (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - ねこみこさん» コメントありがとうございます。お返事が遅れてしまい申し訳ありません。とても嬉しいお言葉ありがとうございます、ご期待に添えるよう更新頑張ります。 (2019年4月1日 1時) (レス) id: a80e55b6ef (このIDを非表示/違反報告)
ねこみこ(プロフ) - とても面白いです更新頑張ってください! (2018年7月3日 22時) (レス) id: 185c2ad794 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅりんぷ | 作成日時:2017年9月22日 17時