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「ハリー・ポッター！」
そう名前を呼ばれた瞬間、広間は水を打ったように静まり返った。続いてひそひそとささやき合う声がざわめきとなって広がっていく、その中を、棒のように細い少年がおっかなびっくり前に出る。
「今ハリー・ポッターって言った？」「あのハリー・ポッター？」ハッフルパフの机でもそうひそひそと言葉が飛び交う。
誰もがあの英雄がどの寮に組み分けされるのかと組み分け帽子が叫ぶ瞬間をいまかいまかと待ち望み、首を伸ばしてはなんとかその姿を一目見ようとしていた。
ソフィアもその例にもれず、組み分け帽子を被ったハリー・ポッターをじっと見つめていた。とはいえそれは彼が同じ寮に来るかもしれない、なんて期待ではもちろんなかった。だってソフィアはハリー・ポッターがどの寮に組み分けされるかなんて、ずっと前から知っている。
「ーーグリフィンドール！」
広間に割れるような歓声があがる。「ポッターを取ったぞ！」という叫び声も、もちろんグリフィンドールの机からだ。
組み分けが終わり、ダンブルドアが挨拶のために立ち上がるのをぼんやりと眺める。この数年で、ソフィアの目の下にあったクマはほとんどわからなくなっていた。
それはソフィアが夢にうなされることがなくなったというわけではなくて、青白い顔をした子どもを見かねたスネイプ先生が眠り薬を調合してくれたりだとか、娘を心配したアランから贈られた安眠グッズのおかげであったりした。
机の上に並んだ大皿に次々と料理が現れる。近くにあった皿から少しずつ取りもそもそと食べる。
「ソフィア？なにか欲しいものがあるなら取ろうか？」
「……大丈夫。ありがとう、セドリック」
３年生になり背の伸びたセドリックは女の子の注目の的だ。そうかい、と微笑むと小さく黄色い声が上がる。それにちらりと困ったような笑いを見せて、ソフィアの隣で取り分けた料理を食べ始めた。
ハリー・ポッターがホグワーツにやって来た。これから彼は賢者の石やバジリスクをはじめとする様々な事件に巻き込まれるのだ。小さな少年には酷な試練を乗り越えて、彼は英雄になる。そして。
ちらりと隣に座るセドリックを見て、気付かれないうちに目をそらす。
おいしいはずの料理は何の味もしなかった。
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燃え尽きふぉっくす。 - すごく面白いです！占ツクでは類稀な圧倒的語彙力に感嘆しました！応援してます！更新頑張って下さい！ (2018年12月23日 2時) (
レス) id: 1eff72f845 (このIDを非表示/違反報告)
あたーたる 狸 - 更新頑張ってください！ (2018年12月6日 21時) (レス) id: eb89fa6efd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馬酔木 | 作成日時：2018年12月1日 2時
