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なんだこれは。
私を抱きかかえる女の顔を見上げる。黒髪に灰色の瞳の美しいひと。間違っても日本人には見えないその人は、やはり日本語ではない言葉で傍に立つ男に話しかけた。「Allan」アラン、だろうか。男の名前だろう。たぶんーーというか、英語だ。
私は生まれも育ちも生粋の日本人のはずで、それが、なぜ、こんなことに。
頭上で交わされる流暢な英語の会話からなんとなく察するに、この２人は夫婦であり、たびたび私に向けられるソフィアという名前は、私の名前であるらしい。
視線を逸らして自分の手を見る。ふくふくと柔らかそうな手のひらは、見間違いでなければ赤ん坊のそれに見えて、けれどわたしは赤ん坊などではなかった。はずなのに。
よくあるトラックに轢かれて、なんて経緯も一切ない。帰りの電車の中で、寄せる眠気に耐え切れず意識が一瞬途切れて。そして目を覚ますとこれだ。意味がわからない。まさかこれはいわゆる転生というやつだろうか。死んだ覚えもないのに。
「あう、」
日本語にも英語にもならない言葉が口から漏れる。英語で交わされる夫婦の言葉は流暢すぎて、残念ながら一般的な日本人であった私では聞き取れない。英語でなにごとか囁いて、灰色の瞳の女性が私の額に口付けた。もう訳がわからない。いっそ夢であってくれ。美人は間近で見ても美人だなと半ば現実逃避のようなことを考えて、いろんなことを投げ出して目を閉じた。
カシオペア・レストレンジ。
若かりし頃はさぞ美しかったであろう名残を色濃く残した、私の曽祖母の名前である。
レストレンジと言われて思い出すのはあの世界的に有名な児童小説のベラトリックス・レストレンジだろう。
生まれたときからそばにあった魔法にはしゃぐ気持ちは一瞬で冷えた。
生まれ変わったこと自体信じられないのに、それが小説の世界でしたなんて一体誰が考える？おまけにレストレンジ。純血主義筆頭だ。
「……はじめまして、おばあさま」
「おやおや、聡明な子だとは聞いていたが。
なお曽祖母の旧姓はブラックであるらしい。
夢なら覚めてくれ。
◼
ソフィアは原作では子どものいなかったカシオペア・ブラックのひ孫にあたる。カシオペア・ブラックはシリウスやレギュラスの祖父アークタルス・ブラックのいとこ。
カシオペアの娘アンドロメダは体が弱く、ソフィアが産まれる数年前に病死している。
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燃え尽きふぉっくす。 - すごく面白いです！占ツクでは類稀な圧倒的語彙力に感嘆しました！応援してます！更新頑張って下さい！ (2018年12月23日 2時) (
レス) id: 1eff72f845 (このIDを非表示/違反報告)
あたーたる 狸 - 更新頑張ってください！ (2018年12月6日 21時) (レス) id: eb89fa6efd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馬酔木 | 作成日時：2018年12月1日 2時
