040：ひとつ、ふたつ ページ41
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「いいよ、なーに？」
山田「あ、これ……」
「……え？」
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山田「引越し祝い、ってことで」
山田が差し出したものを
袋から出して
ゆっくり広げると
コーラルオレンジの
綺麗な
ベビードールが出てきた
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「可愛い……！」
山田「(源氏名)に似合うと思って」
「……買いに行ってくれたの？」
山田「わりぃかよ」
「ネットで買い物するの苦手だもんね？」
山田「……うるせぇ」
「ありがと……明日から、これ着る」
山田「大事にしろよ？」
目が合うと
照れくさくなって
山田が買ってくれてるの
想像したら
なんだか気持ちが温かくなった
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「……山田、忙しい？」
山田「いや、別に」
「……ちょっと話そ？」
山田「しょうがねぇから付き合ってやるよ」
「ちょっとー、なにそれ」
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貰ったベビードールを
カゴの中にしまうと
床に胡座をかいて
山田は
予約の時間まで
一緒に話してくれた
いつも通り
くだらない話を
いつも通り
居心地のいい空気で
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山田「……っと、じゃあ俺そろそろ行くわ」
「うん、ありがとね」
山田「おう、」
あっという間に
予約の10分前になって
山田はシャツを直して
部屋を出ていった
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鏡台を覗いて
少しだけ姿勢を正す
右側からも左側からも
鏡に背中を向けて
汚れがないかチェックして
人差し指で口角を持ち上げた
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これからは
しばらく(源氏名)ちゃんの時間だから
この気持ちは
蓋して鍵もかけて
絶対に絶対に零れないように
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「はい、」
薮「(源氏名)、お客様到着した。行ける？」
「お迎えにあがります」
薮「おっけ、よろしく」
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大きく深呼吸して
部屋を見渡す
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行ってらっしゃい
(源氏名)ちゃん
とびきりの笑顔で
誰よりも可愛らしく、ね
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ひとつ息を飲んで
ふたつヒールを鳴らして
私は
ゆっくりと大階段を降りた
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作者名：▼SOLA | 作成日時：2019年4月3日 11時
