【忍たま】魔界之小路先生が通販で失敗したことから始まるお話 ③ (ページ30)

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とある記憶の段ページ30

「ちょーじ！」

ガラガラと勢い良く自室の扉を開けた七松小平太は、同室である級友の名前を呼んだ。

本に目を落としていた中在家長次は、扉の方向へ視線を向ける。

「…どうした、小平太。」

「そろそろ次の実習についての話し合いの時間だ。長次だけまだ来ないから呼びに来た！」

「…そうか。それはすまん。」

6年生ともなると、座学より実習での学習が主となる。元々学習範囲として予定されているものもあれば、先日のドクツルタケ戦のように臨時で任務を任されることもある。

そしてこの日、ドクツルタケ戦からまだ日は浅いものの次の実習訓練の準備を行うため6年生で集まることにしていた。

「そう気にするな。長次が最後になるのは珍しいからな。」

小平太は本当にあまり気に留めてなさそうな口振りで言葉をかけ、長次が手に持っている本に目をやる。

「なぁ長次、その本そんなに面白いのか？」

「…これか？」

「ああ。この間からずっとその本ばっかり読んでいる気がしてな。」

小平太は部屋に入って長次の元まで歩いて行き、本を覗き込んだ。

「馬…酔う…木…？ちょーじ、これ何て読むんだ？」

「…アセビ、だ。花の名前。」

「へぇ、長次花の趣味があったんだな。」

同室の意外な面を見た、と思ったが、小平太の言葉に長次はふるふると首を振った。

「花についても多少は調べたのだが…」

そう言いながら自分が持っている本の表紙を小平太に見せる。

「アセビ族…ほう、あの一族の事か！」

その言葉に、長次はこくりとうなずく。

「アセビ族の事を書いた本が図書室にあるとは知っていたが、思ったより薄い本だな。」

「…あまり詳しいことは書かれていなかった。解読されたのも40年程前だ。」

「そうなのか、じゃあ新しくもなさそうだな。まぁ長次がそんなに夢中になるってことは面白いんだろうな！」

小平太のその言葉は、長次が6年生との話し合いになかなか足を運ばないほど本に夢中になっていたことを意味していた。そろそろ向かわなければならないと思った長次は腰を上げる。

「…皆を待たせてしまったな。」

「そろそろ行くか。その本、長次が読み終わったら私も借りようかな！」

「…又貸しはできないぞ。」

長次の忠告が小平太の耳に届いたかは不明だが、2人はそのまま部屋を出て他の6年生の元へと向かった。