姉 ページ5
思わず、え、と口に出す。
それもそのはずで、目の前には宮さん、なんだけど髪色の違う宮さん?らしき人がいるのだから。
「静安ちゃんからよお聞いとるよ、妹ちゃんのこと」
と、姉の私の愚痴らしきものを聞かされた。
ローファーにケチつけてくるとか。
わざと私の苦手な献立を出してくるとか。
あろうことか私の女性的悩み事もすべてさらけ出すことに恐怖を覚える。
デリカシー無いの。
「あはは…」
愛想笑いで誤魔化して、とりあえず麦茶を出した。
座っていても分かる体格の良さ。
学校でもモテてそうな人。
宮治さん。
そう聞いた。
でもやっぱり何かキュンとしなくて、ああ違うと感じる。
「侑、しょっちゅう来るん?」
「え、あ…週に何度か」
お茶を一口含み、答える。
姉がいないと本当に静か。
どうして静安なのだろうか。
「もしかしてやけど、侑のが良かった?」
図星だけど。
「いえ、全然…」
違う振り。
何が良くて何がいけないのか分からないのか。
「もしかして静安ちゃんと侑が何しとるか知らんの?」
ああ、それ。
それが知れるのかもって。
「ま、まぁ」
治さんは私の口元に指を当てる。
静かに、というふうに。
私は息を呑んで黙り込んだけど、治さんがふにふにと唇を堪能しはじめたため、腕を掴めば、大人しく玄関まで連れて行かれた。
靴箱を開ければスニーカーと『ピンクブラウンのローファー』がある。
もしかして。
階段を上り、治さんと別れ、扉の隙間をこっそりと開ける。
お姉ちゃん、もしかして。
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