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「‥‥急でびっくりしたよね‥‥、ごめん」
「ううん、お会いできて‥楽しかったですよ？」
「ほんと？」
「本当です」
ホッとしたように笑う智くん。気にしてくれていたんだ。
「‥‥じゃあ、さ」
「‥‥？」
「ほんとに行かねぇ？」
「ぅん？」
「うち」
智くんのご実家？
さっきお母さんが言ってくれたから？
「行こうと思ってたの、ほんとは」
「そうなの？」
「うん。Aちゃんに聞いて連絡すっかなぁって。あっちのが広いし、庭もあるし、公園もあるし」
「‥‥‥ごめんなさい。私が出かけたくないって言ったから」
「んにゃ、‥‥前にさ、話してたの。Aちゃんたちのこと」
うん。
お母さんが私たちの存在を知ってくれてうれしかった。
隠さずに話してくれてるんだって。
「子どもたちが遊べるところ聞いたら、うちに来たらって」
「えっ、‥うわぁどうしよう！‥‥ほんとごめんなさいっ」
「いーのっ。Aちゃんに聞いてからにするって言ってたし」
「でも‥‥」
「行かないって、朝連絡したからだいじょーぶ」
「そう‥‥なの？‥え、それでわざわざ来てくださったんですか？」
「ふふっ、ん、たぶん。会いたかったんだって(笑)
連絡してすぐ来たんだな」
俺んだって言ってんのに、って笑う智くん。
お母さんが会いたいって思ってくれたことも、
智くんの何気ない言葉も、
今日だけでたくさん宝物をもらったみたい。
「ありゃあ、ソッコー姉ちゃんちまで話広まるな」
「‥‥え‥」
「うち行くとき、いっかもしんねぇ(笑)」
「‥‥‥じゃあ、ちゃんと挨拶しなきゃ、ね？」
「‥‥っ、‥ん」
ちょっと緊張するし、怖いのもあるけど。
お母さんや智くんの家族だから、きちんとしたいって思った。
智くんはちょっと目を見開いた後、くすぐったそうに笑ってくれた。
「さとしくーん！おにごっこー！」
「おぅ、今行くな」
子どもたちに呼ばれた智くん。
Aちゃんはゆっくりしてな、って頭を撫でられた。
外は雲一つない快晴。
太陽はそろそろ天辺に着きそう。
廊下から聞こえる笑い声と、風に揺れる洗濯物。
幸せってこういうことなのかも。
日常の何気ない中に、気付けばあるものなんだ。
この風景がずっと続いたらいいな。
智くんに出逢ってから初めて、そう強く願った。
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作者名：ki-bou | 作成日時：2022年1月9日 1時
