＊2＊ ページ16
生ぬるい風が入り込んで、セミの鳴き声が聞こえる。
プールに太陽の光が反射して、きらりと光った。
背の高いひまわりがゆらゆらと揺れて、それよりも高い生垣と木々があるお庭。
これなら外からは見えにくいかも。
智くんを見ると、だから言ったじゃんって若干どや顔してて、斜め下に見る視線にドキッとする。
‥‥かっこいい、どうしよう。
はっと我に返ると、子どもたちはプールに飛びこんでて、
濡れるから来ない方がいいよって笑って、智くんがプールに向かった。
智くんの優しさを感じながら、子どもたちの服をたたんで眺めてたら、
「そこは暑いでしょ？智に任せて、Aちゃんは中で休んだら？」
お母さんが声を掛けてくれた。
「ありがとうございます。でも‥‥」
庭の方に視線を向けると、言いたいことを察してくれる。
「ふふっ、智のこと心配してくれるのね。‥‥Aちゃんも疲れたでしょ？今朝来たの？」
「はい。‥あ、でもバスで来たので楽ちんでした」
「そう？」
なら良かったわね、っておおらかに笑ってくれて、ふっと外に目を向けるともっと笑顔が深くなった。
「この前も思ったけれど、本当にいい顔してるわ、あの子。きっととても幸せなのね」
その視線を辿ってみると、本当に楽しそうにしてる3人がいた。
智くんが指鉄砲で飛ばした水が龍生の顔にかかって転びそうになると、
頭をぶつけないようにかばってくれて、弾いた飛沫でびしょ濡れになってる。
あちゃーっておどけて、みんなで大笑い。
「‥‥そうだと、うれしいです」
「Aちゃんは幸せ？あの子といて」
「‥はいっ」
改めて聞かれると照れるけど、それは間違いなく、幸せだと言える。
にやけてるかも、って思いながら頷くと、優しく笑った。
「ふふっ、なら何も心配することないわね」
「え？」
「智もAちゃんも同じ気持ちなら、何も遠慮しなくていいのよ」
‥‥どうして分かるんだろう。
お母さんだから？それとも、人生の先輩だから？
「さ、中でお茶でもしましょ」
「‥‥ふふっ、はい」
ね？ってちゃめっけたっぷりに笑うお母さんにつられて、思わず笑っちゃった。
肩の力が抜けた感じ。楽になったの。
もう一度外に目を向けると、バシャバシャと水を掛け合ってる3人がいる。
‥‥うん、幸せ。
智くんが笑ってくれるだけで、そう思う。
智くんもそうなのかな？
だとうれしいな。
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作者名：ki-bou | 作成日時：2022年1月9日 1時
