風柱とズルい継子の関係。【不死川実弥】

35.幻の師範。 ページ35

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駆けつけ一発。頭を鷲掴みにされ、痛みに耐えていれば、
(風柱)師範(仮)は(炎柱)師範(希望)に迷惑を掛けただのなんだの。


私をそっち退けで風柱邸に戻るようなやり取り。
口を挟もうとすると、師範は特技の青筋を立てた。


「選べェ。このまま引きずられて戻るかテメェの足で戻るかァ」

『(炎柱)師範(幻の)短い間でしたがお世話になりました！』


怖い怖い。ビキビキいってるから。目、血走ってるから。


冷や汗を掻く私とは対照的に和やかな笑みを浮かべて送り出す煉獄ブラザーズ。


ねぇ、あっさりすぎない？
「Aはもう俺の継子(おんな)だ！不死川の元に返すつもりはない！」「ふざけんなァ！Aは俺の継子(おんな)だ！テメェになんざ渡さねェ！」『二人とも！私の為に喧嘩はやめて…！』とかやりたかったんだけど。





師範の圧にひよって帰る事になってしまったが…帰りたくない。


せめてもの腹いせに師範の後ろを冨岡さんの真似をして、てちてちと歩いていれば、名前を呼ばれ顔を上げた。


「俺はテメェを継子に決めた。決めたからにはどんな馬鹿でも放り出す気はねェ。」

『……』

「テメェも。ソレを承諾したんだ。途中で逃げ出すなんざ許さねェ。」


先程とは違い声を荒げる事はなかったが、その言葉はずっしりと重く伸し掛かった。


衝動で軽率な行動をとったかもしれない。
でも、大切な場所、大切な人が離れて、壊れていくような気がして… とてもあの場にいられなかった。


『……ルール違反をしたのは師範です。』

「ルールなんざ初耳だが…言ってみろ。」

『可愛い継子が命懸けの任務に行っているというのに！女を連れ込んでイチャコラすっきり♡顔で出迎えられたら堪りません！甘ったるい雰囲気の風柱邸なんて嫌です！』


見せたがりですか！このど変態！と叫べば、師範の青筋が二、三本増えた。だが、ここは引けない。


「連れ込んだ覚えはねェ。今朝の女はテメェが呼んだんだろ。」

『はぁ？！』


花嫁修行だかなんだか知らねェが早朝から迷惑な話だと眉間に皺を寄せる師範。


『え？だって…彼女初めて師範と朝を迎えたって…』

「はァ？」


大きな溜息を吐いた師範は心底めんどくさそうに、テメェはどっち信じンだァ？と。


信じる為には聞きたい事が山ほどある。
そして、全て聞いた所で疑いが晴れるとは思えない。



でも……



『………………師範。』



そう答えるしかない。師範だって分かってたでしょ。
口角だけ上げて笑う顔が肯定し、頭を撫でる手に悔しいけど、モヤモヤとした感情が晴れていくのだった。




あさひ

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