事情により風柱と恋仲になりました。

27. ページ28

.


「＿＿ざっとこんなもんだァ。」



歩きながら情報を聞き、実弥さんが話し終えたと同時に列車の座席に座った。



『なるほど。甲が2人共帰って来ないとなれば柱の私達が行く事になるのも仕方ありませんね。』

「チッ…隊士の質が落ちてやがる…」
　
『十二鬼月なら仕方ありません。まだ間に合うかもしれません。まずは急いで鬼を見つけましょう。』



そう言って私は持ってきた荷物の中から数冊の本を取りだし、実弥さんに渡した。



「……何だァ？」

『読んで下さい！恋仲になり、祝言を挙げ、甘い生活を送るお話です。少しは参考になるかもしれません！』

「……。」

『これはですね、第一章出会い、第二章恋仲、第三章言ひ名づく、第四章まぐわ…』

「黙れェ！テメェそれでも女かァ！」



……分りやすい様に教えてあげたのに…


気持ちのない謝罪をした後、でも、と食い下がり、
町に着けばずっと夫婦の演技をしなければいけない、ボロが出ないようにこの設定でいきましょう！
さっさと鬼を見つけないと助かる命も失ってしまう。
そう力説すれば、実弥さんは渋々本を手に取ってくれた。


ふふ。上手くいけば実弥さんにあまーい口説き文句を言ってもらえる。


ぶっ！何ソレ！絶対面白い！聞きたい！凄くっ!!



そう思った瞬間疑問が生まれた。



以前この本を夢中で読んでいた時は、
煉獄さんにこんな風に言われたらと妄想していたというのに、実弥さんに言って貰いたいだなんて。


まぁ、実弥さんの場合は
面白いからという揶揄目的だから、煉獄さんとは違うか。


そう結論付け、
横でページを捲る度に青ざめていく実弥さんに笑い声を呑み込んだ。



そうして、私も。
もう暗記するくらいに読み込んだ本を手に取った。







◇







互いに集中して本を読み、口を開くことなく数十分が経った。


1冊読み終わった私は、
この想いを告げる所が好きなんですよね、恋文に一言だけ、男らしくビシッと！と、実弥さんにもの凄い熱量で話しかけたが、彼の耳には届いていないようで。


彼は目をバキバキにして読み入っていた。


どうしてそんな顔に…


何処を読んだらそんな顔になるのかと本を覗くと、
ぶっきら棒の正実と主人公が漸く恋仲になりそうな時、主人公が昔好きだった大寿郎が現れ、想いを告げられる。という所だった。



「チィ…ちんたらしてっから横から茶々入れられんだァ…」



だらしねぇ野郎だなァ、正実。と悪態をつく実弥さん。
意外とのめり込みやすいんだな…


任務の為とはいえ、私が好きな本を真剣に読んでくれている事が何だか嬉しかった。




.

28.→←26.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す