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あの時のことは思い出せないけど、その前の出来事なら何か分かることがあるかもしれない。
あの日は確か、それスノの収録をしていたっけ。
収録は、完全にみんないつもの楽しい感じだったと思う。
楽屋でもわちゃわちゃ騒いでいたし、そのせいで時間ギリギリになってすごく慌てていたっけ。
スマホに写真とか、ないのかな。
そう思って、『2022年1月22日』と書かれている日のフォルダを探す。
その日以降全然写真を撮っていないことに今更気づいて、少し寂しくなった。
1月22日の写真は、思ったよりもたくさんあった。
唐揚げ弁当を食べているしょっぴーに、横からちょっかいを出しているラウールの2ショット。
ドラマ班の3人が、コントか何かをしながら騒いでいる、だいぶぶれた写真。
雑誌の撮影で使った後いただいたという赤いバラを大切そうに胸に抱いている舘さんと、それを笑いながら見つめる岩本くん。
…阿部ちゃんは？
あの時確かにいたはずなのに、何してたっけ？
何枚も写真をスクロールしていく中に、阿部ちゃんの写真を見つけた。
正確には、岩本くんと佐久間くんの後ろに映り込んでいると言った方が正しいのだろうか。
ぼやけているし下半身が切れてしまっているけど、奥のソファで熟睡しているように見える。
その時俺は、阿部ちゃんに「どうしたの？」と声をかけた気がする。
はっきりとは覚えていないけど、阿部ちゃんは「大丈夫」的なことを言っていたんだろうな。
収録は普通にこなしていても、楽屋で爆睡している阿部ちゃんなんて珍しいなと思った。
何かを思い出して、思わず「あっ」と声を上げる。
もしかしてあの時、阿部ちゃんしんどかったの…？
収録の時があまりにも普通すぎて忘れていたけど、あの様子を見ている限り大丈夫じゃなかったと思う。
俺は、阿部ちゃんの「大丈夫」の言葉の裏に隠されていた本当の意味に、気づけていなかったのかもしれない。
あの時阿部ちゃんの「大丈夫」を鵜吞みにせずに何かできていたら、未来は変わったのかもしれない。
ある可能性に思い当たって、スマホで検索してみる。
検索結果は、予想した通りのものだった。
それが本当なら、こんなことになった理由も想像がつく。
まるで出来すぎたドラマのようなストーリーだし、全て俺の推測にすぎないけれど。
少し考えてから阿部ちゃんに「今からそっち行ってもいい？」と送ろうとしたけれど、一旦そのメッセージを消す。
その代わりに違う人に電話をかけながら、建物を出た。
あの真っ暗な踊り場が、目の前に迫ってくるような恐怖を抱えながら。
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