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最初の一音で、すぐに思い出した。
4日前から俺の頭を完全に支配しているあのサウンドが、部屋に満ちる。
上手く言葉では表せないけれど、言うならば心地よくて懐かしい感じ。
あれから何回も聴いて、今では言葉がすっと自分の中に入ってくるし、あの曲なしでは生きていけない。
他のメンバーたちはあっけにとられて、音色を奏でるスマホを見つめている。
さっきまで騒いでいた人たちもみんな、一瞬で静かになる。
そういえばメンバーにこの話、してなかったよな。
いつ話そうか迷ったまま、予告もなしに松村先生に初解禁されたけれど、このタイミングでの披露は正解なのかもしれない。
初めてこの曲を聴かせてもらった時に一緒に見せてもらった、明け方の空の写真を思い出す。
だいぶ前の話なのが不思議なぐらい鮮明に、あの時の情景が浮かび上がる。
ドラマのためというよりは、あの日のあの空のために作られた曲であるかのような錯覚に陥る。
2番の最初に阿部ちゃんのソロパが聞こえてきた時、7人がハッとして阿部ちゃんの方を見た。
視線に気づいた阿部ちゃんはみんなの方を向いて、照れたような笑顔でちょこっとだけ首を縦に振った。
みんなから阿部ちゃんに向けられる視線の優しさに、心を打たれる。
それにしても先生たちは、本当に歌が上手い。
松村先生の低音と、京本先生のロングトーン。
他にもたくさんの声が重なり合って、混ざり合って、一つの曲を形作っていく。
音に形なんてないけれど、今の俺にはその形が、確かに見えた。
ふわふわと空中に浮かんでいるそれは、あの日阿部ちゃんと一緒に見た朝焼け色に輝いている。
程なくしてそれは、花が開くように曲に合わせてゆっくりと大きくなっていく。
そしてラスサビが始まると同時に、パッと部屋の中いっぱいに散っていく。
あの日見た景色と、目の前の光景が重なって見えて。
なぜだろう。
胸に熱いものが込み上げてくる。
最後の光の一かけらが消えてなくなった瞬間、部屋を包んでいた旋律も消えた。
無音の、silent(サイレント)の時間が訪れる。
『サイレント』よりも『silent』の表記が似合うような、そんな空間だった。
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