「私は戦争屋ではありません」 ページ21
「そういえば、お名前を伺ってもいいですか?」
俺が隠れて昼飯を食べていると、突然、エミさんが声をかけてきた。
「ん。俺はコネシマ。そっちは?」
「エーミールと申します」
「…ふぅん。エミさんって、何年?」
「3年、ですけど…」
「先輩やんけ…」
ちょっと馴れ馴れしくしすぎたか、と苦い表情をしてみれば、エミさんは察したらしく、敬語とかええですよ、と笑ってくれた。
言葉の件が解決したのはいいが、エミさんは顎に指を添え何かを考えているようだった。
「どうしたん?」
「いえ、別に大したことじゃないんですが…デジャヴ、ってやつです」
「デジャヴ……?」
エミさん曰く、この会話に既視感があるらしい。周りに"エミさん"と呼ぶのは同じ図書委員くらいだが、俺が呼ぶのに違和感がないとか。
普段感じる既視感よりも、はっきりと感じるという。
「へぇ……なんかファンタジーやな」
「でも、前世とか結構夢あるやないですか」
「前世……、ねぇ」
「実際、夢も希望も、ないんやけど……」
エミさんのほんの小さな声を、流すことはできなかった。
バッとエミさんの方を向くと、目元を指でなぞりながら俺の視線から逃れるように背を向けていた。
「エミさん……」
「すみません、少し思い出したくないことを思い出しました」
その言葉で悟った。
エミさんはきっと、前世を記憶を取り戻している。その中には、戦場に出ていた俺達が知り得ないこともたくさん含まれている。
例えば、あの時軍基地で起こった惨劇とか。
それを、無理には言わせたくないから、自然に確認してみる。
「前世ぶりやな、エミさん」
「……えぇ、ほんまに」
少し驚いた表情もしつつもすぐに理解したらしく、無理に笑って答えた。
「あの…ごめんな」
「いえ、これは思い出すべきことなんです」
聞けば、負傷したショッピやひとらんを見殺しにした、とか、グルッペンと約束した、とか。
俺の知らない話しかなかった。
「じゃあ…そのグルッペンとトントンの言う"あいつ"っていうのが、俺らの運命を何回も何回も弄ってるってわけやな」
「そうらしい、ですね。私は認識したことはないんやけど」
「俺もないなあ」
ですよね、と返ってきた。
そこでちょうど授業5分前のチャイムが鳴り、現実に引き戻される。
「今は、ちゃんと学生やりましょうか」
「…そうやな」
図書室を出て、教室に急いだ。
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麻季(プロフ) - 黒猫さん» レスのミスでさらに遅くなり大変申し訳ありません。ありがとうございます!そこまで言ってくださるとは感激ですｗ (2019年4月5日 16時) (
レス) id: b5918b08c5 (このIDを非表示/違反報告)
麻季(プロフ) - 支配人Bさん» レスが遅くなり大変申し訳ありません。ありがとうございます!構成は割とこだわったので、めっちゃ嬉しいですｗ (2019年4月1日 3時) (レス) id: b5918b08c5 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - むっちゃ面白かったです!今まで見てきた中でも特に面白かったです! (2019年2月2日 15時) (レス) id: 1a0123f488 (このIDを非表示/違反報告)
支配人B(プロフ) - 話の構成めちゃくちゃ好きです (2019年2月2日 11時) (レス) id: a003c0392f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麻季 | 作成日時：2018年9月29日 2時
