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53 Masaiside ページ35

インターホンが鳴ってすぐに玄関へ向かう。ドアを開けると、Aが顔を真っ赤にしてぽろぽろと涙を零しながら「まさい、っ」と弱々しく俺の名前を呼んだ。

玄関に入れてすぐに抱き寄せると子供のように声を上げて泣き出すからあやす様に背中に触れる。


《行く》とたった二文字のLINEが来たのはついさっき。用事がある時やシルクが家を空ける時は《家にいる?》とLINEが来るからすぐに何かがあったことは察して 《待ってる》 と返事をした。



「何があったか言える?」

俺の言葉にAは首を振る。
体を少し離して「とりあえず入ろ」と頭を撫でると小さく頷いて俺の服の裾をきゅっ、と握りながら後ろをついてくる。


ソファーに座らせて温かいコーヒーに砂糖を入れて、ホイップクリームを乗せてテーブルに置く。Aは膝を抱えてじっとそのカップを見つめていた。
俺も自分の分を持って隣に座る。


「飲む?」
「…うん」

Aの分のカップを渡す。ゆっくり口付けて喉が上下する。上唇についたクリームを舌で掬う。少しだけ表情が和らいでいく。

「おいしい」
「良かった。」
「急に、ごめんね」
「気にすんなっていつも言ってる」
「…ありがと」

未だにうっすらと涙が浮かんでる目が俺を映す。

「何があった…?」

目尻を指で拭いながら聞くとAは一瞬目を伏せて「今日はごめん」と呟く。


「A、今日は寝よう」
「…ん、なんか つかれた」
「たくさん泣いたからだよ 冷えたタオル持ってきてあげるからベッド行ってな」
「うん、」

立ち上がってAの手を握って引っ張る。


「てゆかA、携帯しか持ってないの?」
「飛び出してきたから置いてきちゃった」
「そっか 分かった」
「ごめんね」
「大丈夫 ほら、ベッド行こう」


手を引いて寝室へ入るのを見て俺も洗面所へ向かってタオルを一枚出して蛇口を捻る。十分に濡らして強く絞ってそれを持ってリビングに戻ると俺の携帯にLINEが来ている。

「A、これ」
「ありがとう」
「俺まだやる事あるから先寝てて?大丈夫?」
「ん、」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

Aが布団に入ったのを見て寝室を出る。
LINEはシルクから《ごめん あいつ行った?寝たら荷物届けに行く》と来ていた。そういえば、二日ぐらい家を空けるって言ってたっけ。

《来てるよ 後で連絡する》と返事をして携帯を持ってパソコンの前に座る。


心配なくせに、と思いながらため息をついた。

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作者名:yuyu | 作成日時:2018年5月20日 3時

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