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走ってマサイの家を出るとすぐにシルクが追いかけてきて「とりあえず家、行こ」と私の手を握った。
リビングの電気をつけて「話せる？」と顔を覗き込むシルクの顔は酷く優しくてぽろぽろと涙がこぼれた。
「何があったんだよ、」
「ぅ、ごめ っ ごめん な、さい」
「あー、大丈夫だから、ほら」
ずるずると座り込んだ私を抱きしめて「ゆっくりでいいから」と背中をさする。
マサイの言葉が離れなくて、話そうとしても声がうまく出ない。必死に「エイジくん」と単語を告げるとシルクは「あぁ、わかった」と私の頭を撫でた。
「疑われたの？何かあったのかって」
「うん、」
「で、怒った」
「っ…だれでも、いいのかよって」
「マサイからしたらそうだろうな」
誰でもいい訳でもないし、何かあったわけでもない。やましいことなんてひとつもない。だから腹が立って声を荒らげてしまった。
マサイと喧嘩なんてしたこと無かった。
マサイがあんな風に怒りを自分にぶつけてくることなんて一度も無くて、少し怖かったんだ。
「マサイも冷静になればわかるよ」
「わたし、うまくシルクに 言えないから、っ…マサイからも話聞いて？」
「ん、わかったよ」
私だけの話を聞いたって仕方ない。
メンバー内のことはリーダーがしっかりまとめなきゃいけないだろうし把握しなきゃいけない。
何もなかったとはいえ、あの写真を見せられて全員が全員「そうだね、何も無いよ」なんて言ってはくれない。
「でも、写真のことだろ」
「ん、」
「LINE来てたよ、エイジから。…まあ、ボヤみたいなもんだし今回は放っておこうと思う。何にもないの俺らが一番わかってっから」
「うん、」
「…気をつけろよ。まあ、今はマサイとのこと考えよう」
目尻に溜まった涙を拭われて頭を撫でて、ニッと笑うシルク。
「マサイ落ち込んでるだろうな」
「そうかな、」
「お前は？もしこのままマサイが離れてったらどーする？」
「…絶対やだ、マサイいないの考えられない」
「ん、じゃあお前の悪かったとこちゃんと話せよ。な？」
「明日でいい…？」
「いいけど、俺明日夜までいないからな」
「ひとりで行く、大丈夫」
ふう、と息をついてシルクの肩に頭を預ける。ふんわり漂う香りが鼻腔をくすぐってなんだか安心して目を閉じる。
「寝るなよ」
「ん、」
「俺マサイんちパソコン置いてきたから戻るぞ」
「わかった…」
離れていくシルクの体温。
切なそうなマサイの顔が浮かんで胸が痛くなった。
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作者名：yuyu | 作成日時：2018年5月20日 3時
