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着いたのはシルクがいつも買い物に行く場所。来たことが無いわけじゃないのに、そわそわしてしまう。
「はぐれんなよ」
「ぽん、俺も居るから大丈夫!」
「…うん」
車を降りて三人で歩く。きゅ、と自分のリュックのベルトを握りしめてシルクの後ろへ。隣にはちらちらと様子を伺うダホちゃん。
「買い物終わったらすぐ帰るから。今日はリハビリみたいな感じで、ちょっとだけ頑張ろ」
「ん、」
そう言うダホちゃんに頷いて私たちは街中を歩いた。正直前なんて見てない。シルクの足がかろうじて視界に入る程度。たまに入ってくる革靴や男の人の足がまた怖くて必死にそれを避ける。
「シルク、もうちょいゆっくり歩いて」
「あーわり」
「ぽん、こっちおいで」
ダホちゃんは私を道の端っこの方に寄せて肩をポンと叩いた。
「ぽん」
歩いていたのに、急に立ち止まったシルク。ぶつかりそうになった私をダホちゃんが肩を掴んで止めた。顔を上げてシルクと視線が合う。
「顔色悪い。」
「大丈夫、…大丈夫だから」
「俺先に行ってくるからダホと待ってろ」
「やだ…行かないで」
首を振って言うとシルクはため息をついて「早く帰りてえだろ」と言った。
「でも、っ」
「シルク、俺飲み物買ってくるから そこでぽんと待ってて。ちょっと休んだら行こう。ぽん、お水でいい?」
「あ、うん」
ダホちゃんはにこっと笑って近くにあったコンビニへと走っていく。シルクに「行こうぜ」と手首を掴まれてコンビニの前まで向かう。通りに背を向けてマスクを下げて大きく息を吸った。
「気持ち悪い?」
「…ちょっと」
「もう少し、いける?」
「大丈夫。ごめん」
「謝んな 無理だけはすんなよ」
ダホちゃんがコンビニから出てきて「はい」と蓋を緩めてペットボトルを渡してくれる。二人の「面白いもん売ってっかなー」「なかったらガチャガチャにする?」なんて会話を聞きながらお水を流し込むと少しだけすっきりしたような気がした。
「あの!フィッシャーズの!」
その時後ろで男の人の声がして どくん、と心臓がはねて体が固まる。
「いつも見てます!握手してもらっていいっすか?」
「あー、ありがとうございます〜」
「ありがとうございまーす」
そんな声が私の真後ろから聞こえる。
「後ろにいるの…ぽんさん、ですか?」
「…えっ?」「あ、」
握りしめたペットボトルがパキッと軽い音を立てた。
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作者名:yuyu | 作成日時:2018年5月20日 3時