【呪術廻戦】雨を乞う。⑦【男主】 (ページ18)

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黒猫ページ18

六月下旬。

季節はすっかり梅雨に入り、毎日のように雨が降っている。
俺としては、雨にあたるのは嫌いじゃないから、むしろ心穏やかな期間なのだが。

世間はそうもいかず、中々外出できない不満や、灰色の雲によって心が鬱々とする人も少なくない。
天候というのは、人の心を簡単に動かすもののひとつ。
塞ぎ込む人が多い、ということは、すなわち。

『(…任務、任務、任務。)』

そう、休む暇もなく、連日任務に追われている。

当然、同業の者は皆出払っており、いつでも会えるのは高専で保護している美々子と菜々子くらいだ。

そう言えば、前に悟が言っていた”伏黒恵”くんとは、まだ顔を合わせていないな。
否、まあ、そんなことはことこれに至ってはどうでもいいのだけれど。

『次の任務はどこですか。』

送り届けてくれる補助監督の方たちも、今の時期はとても忙しそうだ。
当然、向かう呪術師も忙しいが、窓や補助監督、その他関係者各位も皆々、落ち着かないのである。

バタバタと入れ替わりたちかわり、タイミングが合った人に問う。

事細かに説明してもらう暇はなく、場所と等級だけを聞き資料を受け取って、また別の人の車に乗る…とそんな具合で。

『(寺か。…寺、ね。)』

車の中で資料をめくり、その詳細を確認する。

次の任務は、東京近郊の寺での呪霊討伐らしい。
等級は低く、数もそこまで多くない。雨という、俺に有利なこの環境下で、負けるわけがない相手。

それでも、神社や寺。
少しでも神や仏に関わりがある”神聖”な場所で軽率な判断をするのはよくない。

『(………それに。)』

普通に降っている雨と、俺が”乞うて降らす”雨は全く同じものというわけではないから。

当然だが、全ての雨が禊(みそぎ)の雨というわけではないのだ。
俺が【天壌無窮(てんじょうむきゅう) 】で操れる対象は、あくまでも、乞うてその慈悲で頂くものを使えるというだけで。

自然を操作できるということではないため、そこも油断大敵な部分だった。