47話 *4/16 更新 ページ48
Aはあれから毎日のように日記をつけ始めた。つけ始めたと言っても文字はすぐに消えるため日記は常にまっさらの新品状態だった。
「そうだったの……あの日記、古本屋でママが買ってきたものなの。トムがそう言うならきっと間違いないわね、その日記は貴女が持つべきだわ！」
ジニーに事の詳細を話すと、彼女は快く日記を託してくれた。
Aはトムとの会話を楽しんだ。彼はとても頭が良く、いろんなことを知っていた。Aはよくお祖母様について質問をした。
《お祖母様はどんな人だったの？》
〈とても聡明な魔女でした。彼女はスリザリン生でしたが、敵であるグリフィンドール生や、劣等生のハッフルパフを見下すようなことをしませんでした。〉
Aは自分とお祖母様を重ねた。自分は父や母ではなく、お祖母様に似たのだろうと嬉しくなった。Aがトムに祖母の事を聞くのは理由があった。
Aには祖母に会った記憶がないのだ。そして、祖母の事を父や母に聞いてもはぐらかされる事が多く、祖母がどんな人物であったかについてAはほとんど知らなかった。
「A？また日記を書いてるの？」
パンジーがベッドから起き上がり、寝ぼけ眼を擦りながら聞いた。
『もうすぐ寝ようと思っていたところよ』Aは慌てて日記を閉じた。
「そんな一日に何回も日記を開かなくたって……明日は朝からスネイプの授業があるんだから……ふあぁ……」
パンジーは再びベッドに倒れ込んだ。Aはそれを見届けると、再び日記を開いた。
《私は中途半端な人間なの。スリザリンとグリフィンドール、どちらとも仲良くしたいと思ってる。両方の前でいい顔する私を他の人はきっとよく思っていないわ……》
〈A、貴女は高潔な血を受け継いだ【特別な人間】です。貴女は常に【選ばれる側】ではなく、【選ぶ側】にいます。他人の評価など気にかける必要はない。貴女のしたいようにすれば良い。〉
《【特別な人間】なんて……そんな大層な者じゃないわ。でも、私の意思に従えばいいと言うのは確かにその通りね。ありがとう、トム。貴方が居てくれて本当に良かった》
Aは今度こそ本当に日記を閉じた。灯りを消し、ベッドに横たわるとすぐに眠りについた。
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作者名：パン太郎 | 作成日時：2021年3月15日 7時
