40話 ページ41
「どうしたんだい？どうして練習しないんだよ。それに、【あいつ】、こんなとこで何してるんだい？」
ロンはスリザリンのクィディッチ･チームの選手を見て言った。Aも目線をハリーからスリザリン･チームに移すと驚いた事にAのよく知る人物が二人もいた。
『……ドラコ？あなた、どうして？……その服！』
「A、ウィーズリー、僕はスリザリンの新しいシーカーだ」
ドラコは満足気に言った。
「僕の父上が、チーム全員に買ってあげた箒を、皆で称賛していたところだよ」
ロンは目の前に並んだ八本の最高級箒を見て、口をあんぐり開けた。
「いいだろう？」ドラコがこともなげに言った。
「だけど、グリフィンドール･チームも資金集めして新しい箒を買えばいい。クリーンスイープ五号を慈善事業の競売にかければ、博物館が欲しがるだろうよ」
スリザリン･チームから大爆笑が起こった。
「少なくとも、グリフィンドールの選手は、誰一人として【お金】で選ばれたりしてないわ。こっちは純粋に才能で選手になったのよ」
ハーマイオニーがキッパリ言った。ドラコの顔がちらりと歪んだ。
「誰もお前の意見なんか求めてない。生まれ損ないの【穢れた血】め」
ドラコは吐き捨てるように言った。Aの胸の底から怒りが渦のように湧き上がった。
怒りに震えたのはAだけではなかった。フレッドとジョージはドラコに飛びかかろうとしたし、グリフィンドールの女選手は「よくもそんなことを！」と金切り声を上げた。
Aもドラコに殴りかかろうとした。しかし、すんでのところで体が止まった。スリザリンのリーダー格がたくさんいる前でドラコに殴りかかるのは今後の事も考えると、とても得策とは思えなかった。
ロンはローブに手を突っ込み、ポケットから杖を取り出し、「マルフォイ、思い知れ！」と叫んで、カンカンになってドラコを庇うように立つフリントの脇の下からドラコの顔に向かって杖を突きつけた。
バーンという大きな音が競技場中にこだまし、緑の閃光が、ロンの杖先ではなく反対側から飛び出し、ロンの胃辺りに当たった。ロンはよろめいて芝生の上に尻もちをついた。
「ロン！ロン！大丈夫？」ハーマイオニーが悲鳴を上げた。
ロンは口を開いたが、言葉が出てこない。代わりにとてつもないゲップが一発と、ナメクジが数匹ボタボタと膝にこぼれ落ちた。
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作者名：パン太郎 | 作成日時：2021年3月15日 7時
