20話 ページ21
「私に隠そうとしてたの！ロンが口を滑らせてくれて本当に良かったわ。私だけ何も知らないなんて絶対にイヤよ」
ハーマイオニーが頭を振って撫でていたAの手をどかした。
『……ごめんなさい。貴女を傷付けたくなかっただけなのよ』
「私、そんなことで傷付いたりしないわ。だから、」
「だから、次からはもっと頼ってね。貴女は間違いなく私の“一番の女友達”なんだから」
『……ハーマイオニー！』
ハーマイオニーともう一度強く抱き合った。すると突然、ハリーが慌ててAとハーマイオニーを引き剥がした。
ハリーが目線で後ろを指している。不思議に思って振り返ると優しい表情で笑っている父がいた。
「おっと邪魔したかな？君たち、Aのお友達だね？いつもこの子と仲良くしてくれてありがとう」
父はハリー達三人と握手を交わした。どうやら三人の正体にはまだ気が付いて居ないようだ。
「君たち、名前はなんて言うのかな？」
「えーっと、僕達、その……」ロンは口ごもった。
「羽根ペン！」ハリーが突然大きな声を出した。
「…羽根ペン…？」父は小首を傾げた。
「僕達、羽根ペンを買いに行かなくちゃいけないんです。早く行かないと、ママがサーベルタイガーに変身しちゃうかも」
Aの脳裏に鶏を蹴散らしながら歩くウィーズリー夫人が浮かんだ。
『それはすごく大変な事だわ、早く行くべきよ！お父様にはまた今度ゆっくり紹介するわ』
「ああそうだね。サーベルタイガーか……なかなか面白い例えだね」
「それじゃあ僕ら失礼します。A、またね」
三人はせかせかと店の外に出て行った。Aはそっと胸をなでおろし、父に向き直った。
「箒の支払いが済んだよ。フリント君にあげる用とAの分、二本買っておいたからね」
『待ってよ、私、箒が欲しいなんて一言も…！』
「Aとは最近喧嘩してばかりだからね、これで許してくれるかな？」
父は眉尻を下げて腰を下ろしAに視線を合わせた。真っ直ぐと向けられた目線にAは頷くことも首を横に振ることも出来なかった。
『私だって喧嘩したい訳じゃないのよ。それに、許すとか許さないとかそういう事でもなくて……これは、私にとって譲れないことなの。お父様がそうなようにね…』
父は眉を下げたまま笑った。父にも譲れない誇りがあるように、自分にも譲れない誇りができたのだ。パンジー曰く、ダサい誇りだけれどね。
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作者名：パン太郎 | 作成日時：2021年3月15日 7時
