#8 ページ9
太宰side
Aは既に死んでいる。
Aに対する疑問ではなかった
確証を持った上での断定だ
事実、Aが視線を下げ口許を緩めているのがなによりの証拠だ
間違っていたのならこの人物はお腹を抱えて笑い、散々茶化してくるだろう
無言の肯定とは正しくこのことである
しばらくの沈黙の後、Aは意を決したように口を開いた
A「…どうやら私は、死んでるらしい」
曖昧な言い方だ
自身のことのはずなのに人伝に聞いたような言い方をする
本人ですら納得してないような…まるで地縛霊のようだ
太宰「…覚えていないのかい?」
A「死に繋がることはなにも。死の間際の苦しみも痛みも恐怖も覚えてないの。勿体ないことをした」
そう言って笑うAは、困ったように眉が下がっていた
Aは何も覚えていない
だけど森さんは知っていたのだろう
Aが死んでいることを…だから…
A「本物の私はね、右の…手首から先がないらしい」
そう言いながらAは、右手に巻かれていた包帯を解いていく
露わになったその手は傷のない綺麗な手だったが、酸化した血のようなどす黒い色をしていた
正常には動くようで、Aは指先を動かしながらも不思議なものを見るように自身の手を眺めている
A「自分の手がこんなになってたのも、中也に言われるまで気づかなかった…目が覚めて、出勤したら中也に会って、彼、私を見て顔が真っ青になってた」
Aは、「太宰にも見せてやりたかった」と悪戯な笑みを浮かべた
どうやらポートマフィアとしては、とうにAの死亡を断定してたらしい
そんな中現れたんだ
中也が血相変えるのも分からなくはない
A「身体は見つかってないらしい。何処にあるかも捜索中だって中也が教えてくれた」
太宰「それじゃあ探し人というのは…」
私の質問にAは力強く頷き、生前と変わらない強い眼差しで私を見た
A「太宰。私の身体を見つけて。でないと私は…死ぬに死ねない」
ーーーーキリトリーーーーー
「何故初めに探し人の名前を言わなかったのだい?」
『そのほうが面白いと思ったから』
「……はぁ(呆)」
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