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「やぁ太宰。遅かったね」
見間違いであって欲しかった
仕事を終え、Lupinへと足を踏み入れるなり投げかけられた言葉
どうやってこころ突き止めたのか、どうして安吾や織田作に交じってグラスを手にしているのか
聞きたいことはたくさんあったが、Aに答えを求めるのは無駄だとここ数日で学んだ
小さくため息をつき、バーカウンターへ歩き寄ると織田作が一席横にずれてくれた
A「こんないいところを教えてくれないなんてひどいじゃないか」
グラスを揺らしながらそんなことを言うAに一瞥くれてやる
気づいているだろうに彼女は気にも留めていなかった
安吾「太宰君に誘われたと言っていましたが…」
太宰「まさか。そんなことありえない」
A「自己紹介に嘘は含んでないよ。ねぇ?太宰」
同意を求めてくるAを軽くあしらいグラスに口をつける
たまの息抜きのはずがAのせいで台無しだ
Aと出会ってから日々の疲労が倍増した
発信機でもつけられているのかと思うほどAとの遭遇率が高い
そして、そのたびに刺さったナイフを抜けだの言ってくる
ここ数日でその数は両手をゆうに超えたが、一度たりとも願いを聞き入れたことはない
出会って何も言ってこないのは今回が初めてだ
そんなことを思っていると、隣に座るAが思い出したかのように声をあげた
A「太宰、どうか私の首を締めてはくれまいか?」
安吾「え”?」
…嗚呼いけない
幻聴が聞こえてきてしまったようだ
はて、数時間前に飲んだ怪しげな薬の効果が今になって出てきたのだろうか
困ったものだ
A「君のその哀れで非力な指で構わないから一思いに…」
太宰「嫌だね。労力の無駄使いだ」
A「…なぜ?」
太宰「なぜってそりゃあどうして僕が君の首を絞めなきゃならないのさ。そう思うでしょ?織田作も」
織田作「そうだな…首を絞めるのは一歩間違えれば死んでしまうしな」
A「それじゃあ打拳でいいさ。それなら死なない」
安吾「そういう問題ではないのでは…」
引き気味の安吾を他所にAは尚も煩く強請ってくる
いつもより煩いのはきっと酒を飲んだからだ
太宰「未成年だろう、君は」
A「はぁ?同い年が何言ってるのよ」
おちょくるようにそう言うAに、思わずため息が零れる
Aがこうして勝手にLupinにやってくることは、この後も数回あったーーー
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