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第弐拾話 ページ21




『及第点』


試行錯誤の末、出来上がったのはなんともいえぬ一つの弁当箱。
一人分しか用意できなかった上にすべて見た目も味もすべてが微妙。

伊黒さんの言う通り及第点にたどり着いた程度。


「……さすがの私も、これ渡す勇気はないんだけど??」


ちなみにこの台詞は昨日から何度も言っている。
でもそれほど、勇気がないのだ(あと根性もない)。

待ち合わせ場所へ向かう途中でさえ
その弁当箱を捨てたい衝動に駆られている。

……投げ捨てていいかな?本気で


周囲には人のいない、現在橋の上――――ポイ捨てには絶好の位置。


「よし」


流すのは環境的にどうかと思うので!!とりあえず川土手に置いておこう…
あとで取りに来よう、あれだよ来るとき落としちゃったからって言おう。

それが根性なしの私が出した最善策だった。なのに____



「…?」


慌ただしい足音が段々とこちらに向かっているのが聞こえて手を止める。
善逸君でもないのに聞こえるって相当だと思う本当に…


「Aさぁぁぁぁぁあん!!!!」


……てか、善逸君じゃん。

揺れる蒲公英(たんぽぽ)みたいな金髪と独特の羽織は見間違えるわけもない。
――――あっ、あと汚い高音も。



「Aっざん”……ぜぇ…はぁ……ぜぇ…」

「えっと……一旦落ち着こうか??」


私の前で急停止した善逸君はかなり息を荒げていた。
なのに喋ろうとするもんだから更に悪化してしまったんだろう。

……うん、落ち着け。






「ごっ、ごめんなさ”い”―――――!!」

「善逸君、主語忘れてるから。あと私たち今凄い絵面だから」


全力の土下座を披露する善逸君とそれを受ける私。
その異様な光景は遠巻きから痛い視線を送られている。


「っじ、実は……任務が…」


それもお構いなし――――それだけ彼にとっては重大なことなのだと察する。
しかし、やっと発された理由はなんともあるあるなもの。


「……それだけのために、走ってきてくれたの?」

「そそれだけじゃないよ!!?だって俺っ、すっごく楽しみにしてたし!!!!」


土下座をする彼に視線を合わすため、しゃがんで驚きを隠せないままに訊いた。

そんな素直すぎる発言にちょっと体が熱くなるのを感じながらも
善逸君らしいな、とかどこかで酷く腑に落ちていた。



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リンゴ味のブドウ - え、あ、もう、好きです (2020年10月31日 20時) (レス) id: 8dfd0cadf9 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ - それな!! (2019年9月15日 23時) (レス) id: fa8cdcdbb1 (このIDを非表示/違反報告)
藍恋(プロフ) - 好きです。ていうか何があったか知りたくて眠れないです。 (2019年9月15日 20時) (レス) id: b8dca656ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:自宅警備員先生 | 作成日時:2019年9月9日 16時

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