君を笑かしたい！！[短編集]

<ぺこぱ 松陰寺さん> ページ12

『ねぇ、方言ってどう思う？』

「…急にどうした」

今まで黙ってテレビを見ていたと思ったら、突然その内容とは全く関係の無いことを聞いてきた。

『私、関西出身なのね？これでも実家では関西弁なの』

「まぁ、そうだな」

『関西弁って、可愛いって言う人結構多いじゃん？だから、勇太はどうなのかなって』

「俺は標準語でもいいよ」

そう言うと、Aは間を詰めて、わざとらしく咳払いをした

『ほんまに？こっちの方が良くない？』

「……そうか？」

とは言ったものの、実際使われてみると新鮮で、悪くないもんだ

『嘘ついたなぁ！今目逸らしたやろ？』

ニヤニヤしながら聞いてくるのが可愛くて、自分でも分かるくらい顔が熱くなった

『やっぱりこっちの方がええんやなぁ』

なんだか悔しくなって、テレビを見ていると、まだニヤケている彼女が俺の顔を覗き込んできた

『そういえばさ、勇太って、山口県出身やったよな？』

「そうだけど？」

『方言とかないん？山口弁、みたいな？』

「ある」

『あるんや！聞いてみたいなぁ、勇太の山口弁』

お願い、って言ってくるのはいいけど、上目遣いはずるい

「やだよ恥ずかしい」

『恥ずいことないってぇ。私方言とか大好きやから、大丈夫！』

「そんなにいいものでもないと思うけど」

『勇太にとってはそうかもしれんけど、私にとってはいいものなの！』

「んー、やっぱり恥ずかしいって」

『えー？なんでなんで』

「いや、だってさ」

こんな風に駄々こねあってても埒が明かないな。

「わかったわかった。1回だけなら」

『ほんま！？やったぁ』

喜んでいるAのことをグッと引き寄せて、強く抱き締めた

「ずっと、一緒におっちゃれーや」

彼女の耳元で小さく囁くと、クスクス笑うAの声が聞こえてきた

『ずっと一緒にいて、ってこと？』

そう、と答えると、Aは強く抱き締め返してきた

『当たり前やんか。可愛いなぁ』

「好きやけぇ」

『何言うてんの。こっちは大好きや』

お互いドキドキしてるのは、聞こえてくる心臓の音で分かった。
真っ赤になっているであろう、情けない顔を見られたくなくて、それからしばらく抱きしめあったままでいた。

<和牛 川西さん>→←<水田さん、櫻井さん>

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す