君を笑かしたい！！[短編集]

<アインシュタイン 河井さん> ページ21

「37度8分…まだ下がらんなぁ」

『ごめんなぁ、せっかくの休みやのに』

いつもは強気なAが弱々しく微笑みかけてきてしんどさが伝わってくる

「いや、寧ろ休みでよかったわ。こんな弱っとんのに一人にしとけんやろ」

『彼女のとこ行かんでええの？』

「だから彼女おらんわ！何回言ったらわかんねん！」

ごめんごめん、と言いながら笑う
元気は戻りつつあるみたいで安心した

『こんな男前放っとくなんて、アホな女ばっかやな』

「そしたらお前は、そのアホな女の中でも一番近くにおんのに、一番興味持たん大アホやな」

『アホはゆずるや』

「なんでやねん」

『明日も仕事なんやろ？そろそろ帰った方がええんちゃう？』

私は大丈夫やから、と言いながらベッドから起き上がる

「おいおい、大丈夫やあるかアホ」

『もー、大っきい声ださんといてや。ゆずるうるさいねん。帰ってー』

「……そんな言うんやったら帰るわ」

そこまで言われるとちょっと寂しくなったが、自分がいると寝れないなら仕方ないと、ゆっくり立ち上がる

「じゃ、なんかあったら電話しろよ。おやすみ」

玄関に向かおうとすると、Aはそでをつまんだ

『…ほんとに帰んなや。あほ』

「なんやねん」

ベッドの横に戻ると、ぎゅっと手を握ってきた

可愛ええなぁ

『ゆずるがおると安心すんねん』

そんなんずるいわ
そんな顔で言われたら勘違いするやん

『ゆずる…好きやで』

我慢できなくなって、小さな体を抱きしめる

「俺の気持ちも知らんと、そんなことゆうなや」

『勘違いなんかしてへんで』

「は？」

頭がついていけなくてぽかんとしているとAは笑った

『ほんまアホやなぁ』

「えっ、なにが？」

『やから、私もゆずると同じ気持ちやで、ってこと』

「気づいてたん？」

『当たり前やん。何年一緒におると思ってんねん』

こいつ、気づいてたのになんもせんかったってこと？
どうなってんねん

『片想いして私に振り回されてるゆずるがあまりにも可愛かったから泳がせてた』

「おまえ、ほんまなんなん」

『だってさ、ちょっとの事でよろこんだり落ち込んだり、ほんま可愛いんやもん』

からかってケラケラ笑うAの口を、キスで塞いだ

突然の事で驚いたのか、ぽけーっと見つめてくる

「次可愛いとか言ったらまたすんで？」

『…めっちゃ可愛い！！』

「……もう素直にキスしたいってゆえや」

風邪うつる？

そんなん知らん

今はこいつの事が好きで好きで堪らんねん

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