【銀魂】志村家長女が、真選組局長と結ばれまして。【近藤勲】

思い出はケーキの中 ページ36

〜貴方side〜


「あ！またやっちゃったー...」

「あああ！！ツッコめねェェェ！！」

「これ、どういう事だろう…」


それぞれ違う場所から、それぞれの嘆いている声が聞こえてくる。

只今志村家は、苦手克服・耐性強化月間中だ。
妙は料理、新八は何故か、苦手なボケへのツッコミ練習、そして私は…


「う…鈍感度96%...」


鈍感さの緩和に励んでいた。
仕事の関係上、敵の行動の予測や意図など、そういったものは簡単に分かるのだが、プライベート、つまり、自分の事となると何も分からなくなってしまうのだ。

何故仕事で出来る事が、プライベートだと出来ないのだろうか…


「はあ…結局上達しなかったわ…」

「はあ…結局体力消耗しただけで、克服出来なかったなー…」

「お疲れ様、2人共。」


全員体力が底を尽き、休憩する事にした。
そこで、お茶を持ってくると言った妙に任せてしまった自分が馬鹿だった…


「実は、お菓子にも挑戦してたんです。お茶請けにどうぞ。」


そう言った妙の手には、いつもの如く黒く、原型を留めていない茶菓子があった。

一体、何を作ったのか…


「あ、姉上…こ、これは一体何ですか...？」

「蜜柑ケーキよ。ちょっと焦げちゃったけど…昨日買い物に行ったら、蜜柑が割引セールしてて、買っちゃった。」


あくまで予想だが、本来なら綺麗なオレンジ色になるのではないか…少し焦げたという次元ではないと思うが…

そういえば、蜜柑は11月が旬だったな…
昔は、父上がよく買って来てくれていたけど…懐かしいな…


「ね、姉さん？！」


私を呼んだ新八は、今にも顎が外れそうな程口を開いていた。
それに気付いた時、口の中に何かあるのに気付いた。

そう、無意識のうちに妙特製の蜜柑ケーキを手にしていたのだ。
妙の方を見ると目をきらきらさせてこちらを見ていた。
こうなったら勢いで乗り越えようと決め、ケーキを噛み締めた。


「………あ、美味しい。」

「ほ、本当ですか！？良かったー！」


しっかり香る蜜柑の甘酸っぱい香り、生地に練り込まれた蜜柑の果肉。
見た目からは想像出来ない程美味しかった。
私の反応を見た新八も口にし、同じリアクションをしていた。

これは、めげずに続けた妙の努力と、思い出を大事にしていた妙の思いが成せるものなのだと、とても微笑ましく思えた。

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