愛をありがとう ページ48
〜No side〜
残された3人は、一気に静かになった空間で優雅に時間を…過ごすことはなく、ヴァルドはAとソアラに頭を下げ、急いで店へ戻った。
そして、より一層深い静寂が訪れた。
残された親子は顔を見合わせ、Aが先に笑みを浮かべ、母に問う。
「…母さん、紅茶のお代わりどうする？」
「ええ、お願いするわ。」
互いに端麗な笑みを浮かべ、久々の女2人の空間を懐かしんだ。
今日はソアラの酒場は定休日。
明日からはまた、別の意味で騒がしい厨房で客を捌き、調理をする。
違うところがあるとすれば、3日後には一緒に働いていた娘が側に居ないということ。
20年以上も一緒に居た娘が飛び立つ時を嫌でも感じるこの時間は、ソアラの涙腺を刺激した。
同様に、Aも紅茶を淹れながら家族と過ごした思い出が1つずつ頭を過り、泣かないように紅茶を淹れることだけに神経を尖らせた。
「はい」
「ありがとう。……あら、態々茶葉変えたの？」
口元に運んだ瞬間に漂う香りに、ソアラは思わず手を止め、Aに訊ねる。
だが、Aはにこっと笑うばかりで、何も言おうとはしなかった。
昨日の仕返しのつもりかとソアラが黙って口に含んだ瞬間、思い切り目を見開き飲み込んだ。
「A、これ…」
「ヴァルドに頼んでたんだ。間に合って良かった！」
Aがソアラに淹れたのは、言った通りソアラとアイレードの思い出の一品。
しかし、近年入手が難しく、ソアラは諦めていたが、Aはヴァルドに相談し、何とか入手出来ないか悪戦苦闘していたのだ。
「ここまで育ててくれてありがとう、母さん。恩返しなんて言うつもりはないけど、受け取ってほしいな。」
まだ子供だと思っていた娘が、こんなに立派に育って、更には自分の為に陰で色々してくれて、嬉しくない親が一体何処にいるというのか。
ソアラは堪えていたものが一気に溢れ出し、止めることはせず、愛おしそうにカップを撫でた。
「馬鹿ね…お釣りが来るわよ、こんな...出航前に何回泣かせる気？」
「何度でも。それが嬉し涙なら。」
愛くるしい愛娘の愛くるしい笑顔は、ソアラの胸を更に締め付ける。
口も達者になったわね、なんてソアラが冗談を言えば、Aは不機嫌にさせたかと不安がったが、ぷっとソアラが吹き出すので、してやられたといった表情を見せる。
「ありがとう、A。喜んで頂くわ！」
そしてソアラは、涙と共に紅茶を全て胸に仕舞い込んだ。
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アルナ(プロフ) - 五月さん» コメントありがとうございます！あらら、夢主ちゃん強しですね…文才だなんて、嬉しいお言葉ありがとうございます…！ (2020年10月21日 22時) (
レス) id: 7b1df57a60 (このIDを非表示/違反報告)
アルナ(プロフ) - チリーノさん» コメントありがとうございます！キュンキュンできるよう頑張ってます！笑 当初は出す予定のなかったキャラなので、評価頂けて嬉しい限りです…！ (2020年10月21日 21時) (レス) id: 7b1df57a60 (このIDを非表示/違反報告)
五月 - サンジ目的で見ていた筈なのに、いつの間にか夢主ちゃんが見たくて来てる...アルナさんの文才からなせる業ですね!(^^)! (2020年10月21日 7時) (レス) id: e42a882344 (このIDを非表示/違反報告)
チリーノ - もうキュンキュンしっぱなし!!!ヴァルドくんカッコイイ〜(//∇//) (2020年10月19日 21時) (レス) id: c3fee6268f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アルナ | 作成日時：2020年9月14日 15時
