悲しみによって露呈しない ページ35
〜Your side〜
あれから私もヴァルドもかなり飲んだ。
こんなに楽しい席で、飲まない方がおかしい。そう思うくらいには。
お陰様で顔は赤くなっているだろうが、体質的にそこまで酔いは回っていない。
だが、隣で飲んでいたナミさんとヴァルドはかなり酔っている。
酔っているヴァルドを見て、すっかり忘れていた聞きたかったことを思い出し、ゾロさんに訊ねる。
「そういえばゾロさん、どうしてヴァルドのことを…」
「ああ、この前島を徘徊してた時に、偶々入った店の店主がアイツだったんだ。」
「何だ、また迷ってたのか。」
「迷ってねェよ!」
本人は否定していたが、本当は迷いながらヴァルドの店に行き着いたんだなと思うと、何だか微笑ましくて笑っていた。
夜はまだまだ続く。話も尽きない。こんな時は酒に限る。
父がよく飲む口実で使っていた言葉を思い出した。
今思い出しても、口実であったことは事実なのだが、話が尽きず、いつも楽しそうに海での話を聞かせてくれたのも事実。
そんな昔のことを思い出して視界が滲みそうになったので、酔い覚ましにと外へ出る。
「Aちゃん」
「ッ!サンジさん」
優しくて察しのいい彼のことだから、きっと泣きそうになっていたのはバレているだろう。
でも、何も言わずに隣に並んで、冷えるからとジャケットを掛けた。ただそれだけ。
「優しいですね、本当に。」
「いやァそんな〜♡♡」
そんな彼の笑顔は、一瞬蘇った悲しみを簡単に消し去ってしまった。
不思議だ。外は僅かながら冷えるというのに、こんなにも暖かくて心地良い。きっと、彼と居るから。
家族や幼馴染と居る時と、全く異なった安心感を憶える。
だけど、あの時の"別の感情"の正体ではない。
それは未だに分からない。だから、彼と居る時は正体を探ろうとして黙り込んでしまう。
そんな時、不意に彼の横顔に視線を向ける。
淡い色の短髪に隠れた煙草から、何とも幻想的に映し出される白い煙。
ほんの少しのワンシーンに、釘付けになった。
そこで、急に彼がこちらに身体を向けるので動揺したが、にっこりと笑って口を開いた。
「本格的に冷えてきたな…そろそろ中に入ろうか、Aちゃん」
「そ、そうですね。ジャケット、ありがとうございました。」
「そんな〜♡何ならずっと持っててくれても良いんだよ〜♡♡」
否応にも乱された心に、完全に止まった思考。
この感情は、何?
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アルナ(プロフ) - 五月さん» コメントありがとうございます!あらら、夢主ちゃん強しですね…文才だなんて、嬉しいお言葉ありがとうございます…! (2020年10月21日 22時) (レス) id: 7b1df57a60 (このIDを非表示/違反報告)
アルナ(プロフ) - チリーノさん» コメントありがとうございます!キュンキュンできるよう頑張ってます!笑 当初は出す予定のなかったキャラなので、評価頂けて嬉しい限りです…! (2020年10月21日 21時) (レス) id: 7b1df57a60 (このIDを非表示/違反報告)
五月 - サンジ目的で見ていた筈なのに、いつの間にか夢主ちゃんが見たくて来てる...アルナさんの文才からなせる業ですね!(^^)! (2020年10月21日 7時) (レス) id: e42a882344 (このIDを非表示/違反報告)
チリーノ - もうキュンキュンしっぱなし!!!ヴァルドくんカッコイイ〜(//∇//) (2020年10月19日 21時) (レス) id: c3fee6268f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルナ | 作成日時:2020年9月14日 15時