愛しの ページ30
〜Your side〜
夜からシフトに入っていた人達と交代し、裏口から出ようとした時だった。
料理を一通り運び終えた母が、既にドアノブに手を掛けていた私の元へ駆け寄った。
何かあったかと母の息が整うのを待っていると、唐突に肩をガシッと掴まれ、その勢いに任せて口を開いた。
「暫くはこっちで寝るから。」
「また唐突に…私は構わないけど...」
「じゃあ、サンジ君のこと宜しくね!ほら、今頃きっと愛しのダーリンが待ってるわよ!」
「なッ!何を言い出すかと思えば...!」
母の突然の冗談に、思わず声を荒げてしまい気まずくなったので、顔が赤くなってまた揶揄われる前に外へ出た。
その瞬間、タイミングよく身体が熱くなり、何度も何度も母の冗談が頭を巡る。
昼間といい、さっきといい、母は何を企んでいるのだろうか。サンジさんまで巻き込んで…全く...
「取り敢えず、帰ろう…」
まだ熱を持つ顔に反して冷えた手の甲を顔に当て、風に当たりながら帰路につく。
家が見えて来たところで、窓から電気の光が垣間見えたので、玄関まで走ってすぐキッチンへ向かった。
「あ、Aちゃ〜ん♡お帰り〜♡お疲れ様♡」
「は、はい、ただいま。遅くなってすみません、手伝いますよ。」
彼の顔を見て、折角冷えたというのに、またぶり返してしまって思わず下を向きながら返事をした。
幸い、彼にそのことについて言及はされなかった。
様子を見ると、丁度今から作り始めるところのようだ。
母のことを伝えなければと口を開くと、そうかと呟いたのに対し、急に鼻血を出すのでもう驚いた。
しかし、彼は自分が出血していることに気付いていないようだった。
手元にティッシュがあったので、止血するためにこちらを向くように促した。
「サンジさん、こっちを向いてくれますか?」
「は〜い喜んで〜♡…え?」
「少しじっとしてて下さいね…」
彼は状況が飲み込めない、といった様子だったが、説明より先に止血をしなければと鼻元にティッシュを宛てがう。
しかし、何故か今の一瞬で悪化してしまった。
「サンジさん、大丈夫ですか?!」
「だ、大丈夫…ちょっと、刺激が、強くて…」
「サンジさんッ!」
フラッと前のめりに倒れそうになったサンジさんを受け止めて、寝かせた方が良いだろうと判断し、何とかソファーまで運び、横たわらせた。
「サンジさん...」
思わず、彼の名前をポツリと呟いた。
心配で堪らなくて、片時も離れず彼を見ていた。
237人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アルナ(プロフ) - 五月さん» コメントありがとうございます!あらら、夢主ちゃん強しですね…文才だなんて、嬉しいお言葉ありがとうございます…! (2020年10月21日 22時) (レス) id: 7b1df57a60 (このIDを非表示/違反報告)
アルナ(プロフ) - チリーノさん» コメントありがとうございます!キュンキュンできるよう頑張ってます!笑 当初は出す予定のなかったキャラなので、評価頂けて嬉しい限りです…! (2020年10月21日 21時) (レス) id: 7b1df57a60 (このIDを非表示/違反報告)
五月 - サンジ目的で見ていた筈なのに、いつの間にか夢主ちゃんが見たくて来てる...アルナさんの文才からなせる業ですね!(^^)! (2020年10月21日 7時) (レス) id: e42a882344 (このIDを非表示/違反報告)
チリーノ - もうキュンキュンしっぱなし!!!ヴァルドくんカッコイイ〜(//∇//) (2020年10月19日 21時) (レス) id: c3fee6268f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アルナ | 作成日時:2020年9月14日 15時