谷裂*雨(2) ページ43
「…谷裂」
「…すごい汗だぞ」
「え…?」
額に手を触れると確かにすごい汗をかいていた
「はは、本当だ……今日蒸し暑いからかな…」
「大丈夫か」
「うん!大丈夫!それより谷裂任務終わるの早かっ…たね…?」
谷裂は私が言い終わる前に自分の軍帽を深く被せてきた。
「えっ…谷裂…?」
「…無理して笑うな。お前は笑っているつもりだと思うが引きつってすらない。全く表情が動いてない。」
「…嘘」
「…お前のそのような顔は好かん。」
「……」
「……谷裂は、雨は好き?」
「…?急になんだ?」
「…なんとなく。」
「そうだな…好きではないが、嫌いでもないな。
ジメジメするし、たとえ非番だとしても鍛錬をする気にはならない。だが、静かに雨の音を聞くのは嫌いじゃない」
「…そっか。」
「赫坂は嫌いか?」
私は無言で頷く。
「死んだ日が雨だったから、嫌い。」
「…そうか。」
すると谷裂は私のことを抱きしめた。
「…心臓の音は落ち着くと、佐疫が言っていた。雨ではなく、そっちでも聞いていろ。」
そう言って、彼は私のことをさらに抱き寄せ、胸に耳を当てた。
トクン、トクン、と彼の心臓の音が聞こえる。
…手の震え、目眩、頭痛が収まってきた。
と、同時に安心感で眠くなってきた。
体温は低い彼だが、それすらも心地が良い。
「眠いなら、寝て忘れろ。夕飯時になったら起こしてやる。」
そう彼が言ってくれたので私はゆっくりと目を閉じた。
意識を手放す時には雨の音は聞こえなくなっていた。
_____おまけ
「赫坂、起きろ。夕飯だ」
「…何時間くらい寝てた?」
「…4時間ほど」
「嘘…そんなに…今日夕飯当番私だったのに」
「斬島と佐疫が作ってくれた」
「後でお礼言わないと…」
私は立ち上がって食堂に向かう
「赫坂」
「ん?」
「もう大丈夫か?」
谷裂は少し心配そうな顔をする。
「…うん、もう大丈夫だよ。」
私はニコッと笑って返す。
ちゃんと笑えているだろうか。
「…そうか」
すると、谷裂は安心したような顔をした。
「にしても、谷裂が他人の心配するなんてね」
「まぁ、好いてる相手が今にも死にそうな顔をしていればな」
「…ん?」
「ん?」
「今…誰って言った?」
「?好いてる相手と言ったが」
「好いてるってどういう意味の?」
「…お前の想像に任せる」
谷裂はそう言って、早足に食堂に向かった
「ええええ、すごい気になる!」
私も、彼の後を追った。
外の雨は止んでいて、夕日が差していた。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ある人 | 作成日時:2021年1月15日 0時