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テーブルの上には大量の缶ビールと梅酒に、一杯のカクテル。

てっちゃんの口から「カカオフィズ」なんてリクエストが放たれた時は驚いて目を丸くしてしまった。

職業柄、というよりかは個人的にカクテルが好きなので、リキュールやシロップ等は揃っている。
にしても、今日作るとは思わなかったけれど。

「頂きます。」
「ん、どうぞ。」

厚い唇がゆっくりとロンググラスに近づく。

カカオフィズ。

仄かに香るカカオと、しゅわりと弾ける炭酸。
心中に閉じ込めた烈しい想いを、ちくりと炭酸に刺されるような。

「恋する胸の、痛み。」

ごく、と液体が喉を通り越す音がして、てっちゃんの視線が刺さった。

口に出すつもりは無かったのだが。
缶ビールと梅酒に冷静な判断力を奪われたのだろうか。

「何それ?」
「....カクテル言葉、って言って、カクテルにはそれぞれ花言葉みたいに意味があるの。」
「良いね、ロマンチックやん。」
「そうね。カクテル言葉が好きでさ。バーで働き始めた頃、夜な夜な調べて覚えたの。懐かしい。」

二人してふふ、と笑う。

甘ったるい空気。
その甘さを纏った私達はそのまま倒れ込んで。
天井とてっちゃんの顔が良く見えた。

あ、押し倒されてる。

鈍く反応すれば、途端に唇を唇で塞がれて、冷たい液体が注ぎ込まれる。

「....カカオフィズ。」
「俺達さ、一緒だな。」
「何が?」
「恋する胸の痛み、一緒やん。」

あれ、てっちゃん、気付いてたんだね。
彼にそう伝えたかどうかもわからない位に酔い痴れていた深夜二時。

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作者名: | 作成日時:2020年5月8日 7時

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