【はじまり】 ページ1
.
「僕を誘拐してください」
少し前の俺なら、こんなことを言われて「え?」とか「は?」とか面食らうことしか出来なかっただろう。
「おいで」
差し出した手に重ねられた手を握って、これからこの世の中に背を向けて生きていく覚悟を決めた。
__________『KASEROSE』
話は一週間前に遡る。
その日、俺はバイト先で前から当たりの強かった先輩に散々嫌味を言われて、むしゃくしゃした気持ちのまま真っ直ぐ家に帰る気にならず、コンビニの袋を下げて公園に立ち寄った。時刻は深夜。
有「はあぁ…なんかいいバイトねぇかな…」
どうせ他人のことだし職場だけで深く関わる訳でもない。
ただ、無駄な先輩風吹かせられても疲れる。
なんでこんなんばっかなんだよ。
ベンチに腰かけて缶ビールのプシュッと爽快な音を聴きながらスマホで検索をかける。
手っ取り早く稼げるとこなんて怪しいもんしかない。
有「ついてねーよな」
生まれ持った性か。
両親は幼い頃に離婚して父親は行方不明という家庭に育った。
母親は夜の仕事でいつ会っても酒臭かったし男はとっかえひっかえ。
“新しいお父さんよ”と何度聞いたことか。
そんな家から早く出たくて高校を卒業してすぐ東京で就職し上京。
なのに二年後に会社は倒産。
現在フリーター生活ってわけ。
有「…ぷはぁ〜…」
だっせぇ大人。
これじゃ親と何も変わんねぇ。
夜風の冷たさにいつまで経っても酔いは回ってこない。
酔い潰れていい夢みたい気分なのに。
有「ハッ、クシュンッ!…寒っ」
帰るか…
缶ビール二つを空けたところで立ち上がると一瞬だけふらついた。
風邪引いたなら馬鹿らしい。また溜め息を吐くと何処からか古びた音が聞こえた。
_キーッ…キーッ…キーッ…
誰もいないはずなのに、この音、コワッ…
やっぱ酔ってんのか?幻聴が聞こえてる?
寒気がしてきた。……風邪だな。
帰ろう帰ろう
_キーッ…キーッ…キーッ…
どんどん大きくなっていく不気味な音。
それは遊具の方からで。
時刻はもうすぐ深夜2時。
まさか…まさかな…
目を凝らしてみると、ブランコが揺れていて人影が見える。
有「嘘だろっ…!」
昔から霊感はあったけど、こんなにハッキリと見たのは初めてで、足が動かなくなった。
_キーッ…キーッ…キーッ…
その間もずっと音は響き続けていた。
348人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢莉(プロフ) - すらささん» すらささん、初めまして!お返事遅れましてすみません。お兄ちゃんっぽいカッコいいところが書きたかったんです!伝わってると嬉しいです(^^)ありがとうございます! (2019年7月14日 19時) (レス) id: 5bdce97967 (このIDを非表示/違反報告)
すらさ - 大ちゃんヤバかっこいい! 作者さん天才ですね!大好きです! (2019年7月3日 19時) (レス) id: 83dcd98d4d (このIDを非表示/違反報告)
夢莉(プロフ) - JUMPLOVEさん、お越しいただきありがとうございます!好みのお話で良かったです(^^)頑張ります〜! (2019年7月2日 17時) (レス) id: 5bdce97967 (このIDを非表示/違反報告)
JUMPLOVE - この手のお話がとっても好みで、ありやまなのがほんっとにたまりません!!!応援してますので、更新頑張ってください!!! (2019年7月1日 1時) (レス) id: f4e667ae46 (このIDを非表示/違反報告)
夢莉(プロフ) - くるすけさん» くるすけさん、初めまして(^^)ありがとうございます!頑張らせていただきます!! (2019年5月18日 21時) (レス) id: 5bdce97967 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ