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彼についての考察3 ページ3

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何分たっただろうか

あれから動けずに
ずっと翔ちゃんを見つめていた。

目を逸らす事ができなくて

切なくて、早く目を開けて欲しくて

早く笑って欲しくて

「おきてよ翔ちゃん、」


暫くして
小さい呻き声とともに、薄らと目を開けた彼。

「大野、くん」
「翔ちゃん、あぁ、よかった翔ちゃん」

ほんとに、と心からそう言うと、彼は困ったように目を泳がせた。


「ごめん」


ぽつんと零れた謝罪。
たった三文字に、彼の気持ちが溢れ返っている。
こんな時掛ける言葉って、何だろう
どうしたら翔ちゃんを安心させてやれるだろう

だけど当時の俺は、考えなしに口をついて出てしまうものを押し込められなかった。

「翔ちゃん、どして相談してくれないの」
「ごめん」
「なんで言ってくれないの」
「ごめん」
「こんな、こんななるまで頑張らないでよ」

右目からぽろっと熱いものが零れた。
喉の奥が苦しくなって、駄目だ、泣きたいのは翔ちゃんなのに。
でも目からはどんどん涙が溢れるばっかりで。

「ねえ、しょうちゃん」

彼を見ると、唇を噛んで、下を向いて
ひくりと喉を鳴らしながら
大きな目から涙をぼろぼろ零していた。

「ごめん」
「あ、違う、しょうちゃ」


傷付けてしまった

泣かせた

責め立てた

酷いこといった


ぐるぐると考える頭の整理はつかない。

翔ちゃん違うよ責めてるんじゃないんだ
違う違う、悪いのは、
悪いのは翔ちゃんじゃない
悪いのは、おれ

じゃ ない

違う


言い訳と弁解が浮かんで消えていく

それでもごめんと言えない自分が、
どれ程までに狡い人間か思い知る。


ふと
翔ちゃんが言の葉を紡ぐのが聞こえた

おおのくんと、嗚咽混じりに
俺の名前を呼んでから

ひとこと

零した



「おれ、がんばらなきゃ壊れそうなんだよ」




翔ちゃんをこんなにも儚く感じたのは
これが最初で最後だった

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水筒(プロフ) - ∞八重歯くん∞さん» 有難うございます…今考えているお話が終わり次第書かせていただきますね(小声) (2014年12月29日 15時) (レス) id: f62d53d291 (このIDを非表示/違反報告)
∞八重歯くん∞ - 水筒さん» はい∀リクは受け付けていますか?受け付けていたら、ヨコヒナの裏を…(小声で (2014年12月29日 9時) (レス) id: c0fa85a508 (このIDを非表示/違反報告)
水筒(プロフ) - ∞八重歯くん∞さん» 頑張りますね!! (2014年12月29日 8時) (レス) id: f62d53d291 (このIDを非表示/違反報告)
∞八重歯くん∞ - 水筒さん» 文才があり、ヨコヒナがもっと見たくなります☆これからも頑張ってください∀ (2014年12月28日 23時) (レス) id: c0fa85a508 (このIDを非表示/違反報告)
水筒(プロフ) - ∞八重歯くん∞さん» ありがとうございます!拙い物ですが、愛だけはこもっておりますので読んでいただいて嬉しい限りです!まだまだ書いていきたいので、応援の程宜しくお願いします! (2014年12月28日 21時) (レス) id: f62d53d291 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水筒 | 作成日時:2014年12月27日 22時

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