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『…おやすみ?』
…ダメだ、全然締まらない。
なんか語尾が上がってしまった。
「うん、おやすみ。あ、待って」
『?』
「大丈夫だったら、連絡先教えて。さっき連絡しようとして持ってなかったなって気付いて」
『…同じこと思ってた、はい』
組織の人間がほぼ占めているその中に増えた連絡先が単純に嬉しい。
『…アイコン可愛い。猫?』
「そうそう。どこで見たやつだったっけ…めちゃくちゃ人懐っこかったけど、飼い猫なのかな」
『野良猫でも警戒心ないのはいるし、わかんないよね。…ねぇ、最初の頃レイが私に対してめちゃくちゃ警戒心むき出しの、野良猫みたいだったの、覚えてる?』
「覚えてる!あれなんでだったのかな」
『さぁ…?ヒロがわかんない事、私が分かるわけないよ』
「そう?……零の話もいいけどさ」
『うん?』
ちょっと顔をのぞき込まれて、思わず後ろに後ずさってしまった。
「Aの話も聞かせてよ。聞きたいことあるし、そっちの聞きたいこともあったら答えるよ」
…ヒロの聞きたいことってなんだろう。
組織に潜入してる理由とか?それは、まだしばらくは答えられない。
そもそもきちんと組織の内情探って上に報告してるとはいえ、基本的には好き勝手させてもらっている身分だし。
…大まかにあった3つの目的のうち、1つは不可能がわかって消えた。
残り2つはまだどうしたらいいのかもわかっていないし。
私の記憶が正しければ、彼の潜入がバレるのはまだかなり先のことだ、今から気をつけてって言っても仕方ない気がする。
私が返事をしないからヒロはなにか勘違いをしたみたいで、ごめん、と謝ってきた。
「…そんな顔させたかったわけじゃないんだ」
『どんな顔してた?』
「なんか…どうしたらいいのかわからない、みたいな顔」
『…こっちこそ、ごめん。いつも話せないことが多いし、そもそも話すのもうまくないし。愛想が悪い自覚もあるんだけど。…でも、いつも優しくしてくれてありがとう』
今言えることはこれだけだ。
なんか最後の方は小学生の作文みたいになってしまったけど、でも本心だ。
優しくしてくれて、大切にしてくれて、嬉しいと思ってる。
ヒロはぽかんとした後、ちょっと笑った。
「愛想が悪いなんて、ほんとに思ったことないよ。わかった、なんかできることがあったらなんでも言って」
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作者名:雨宮 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aroute1351/
作成日時:2022年5月29日 7時