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Side H
男だらけの空間に、女の子がいたら目立つのは当たり前だと思うんだけど。
それが誰の目から見ても目を奪われるくらい綺麗な子だったら、余計に…ってわけで。
でもそうやって、入校早々から散々噂になっているのに、目立っている本人は周りの反応に全く興味がなさそうだった。
予想外のところで接点ができて、よく話すようになってから、気付いたことがたくさんある。
知ってる人の前だと表情が豊かで、喜怒哀楽の表現も激しかったりとか。
頭の回転が早くて、会話のテンポがよかったりとか。
ほんとに自分の容姿には興味がないっぽいとことか。
他人と一線を引いてて、自分のことはあまり話したがらないこととか。
好きになるかもしれない、と思ったらもうその子のこと好きだよって、そういうことに詳しい同期が言っていた。
まぁつまりそういうことで。
関係性が特に変わることなくここまでダラダラきたわけだけど。
「…零は知ってたの？」
「なにを、どこまで」
部屋に置いてあったメモにガリガリとボールペンを走らせながら、こっちを見ないで返してくる。
これ書きやすいな、とか言ってるけど違うんだよ。
俺はボールペンの感想を聞きたいわけじゃない。
「…全部？」
「潜入のことは上からも聞いたし、Aからも直接聞いた。同期だけど公的には上司だし。…でも、ヒロが心配してるようなことはなにもないよ」
「…名前で呼んでて？」
「立場上、お互いまずいかなって話をしただけで、別にヒロだって呼んでみればいいさ。嫌がらないと思うよ」
「そんな簡単に言うけどさぁ」
「Aとどうなりたいかが明確にあるなら、そろそろ行動した方がいいよ、絶対に」
『何の話？』
……びっ…くりした。
一瞬、誰だかわかんなかった。
淡い水色のドレスも、シンプルだけど上品なアクセサリーも、ポニーテールにした髪がふわふわと揺れる様子も。
1度も見た事なかったから。
でもすごい似合ってて、なんていうか、反則だろって思うくらい
「…可愛すぎるだろ」
『…ほんと？ありがとう』
あ、やばい、声に出てた。
隣を見ると零が肩を揺らして笑ってる。
「A、こんなもんだと思う。なにか媒体…USBとか持ってたらできれば回収してきて」
『ん、わかった。頑張ってみる…もう行こうか。ヒロ』
ぶはっ、と零が吹き出した。
俺で遊ぶなよ…。
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作者名：雨宮 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/aroute1351/
作成日時：2022年5月29日 7時
