イキノコリ。【虹の世界】 (ページ42)

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しゃーろっとべいかー 3 ページ42

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　絞める力を強めようとした、瞬間。デイジーの言葉に、わたしは動けなくなった。

「ひゅっ、ひゅう、が、さ……っえあ」

　ひゅうがさま。日向。ひゅうが……。
　それは、わたしに、名前をくれた人だった。何もかも忘れたふりをしたわたしに、アイリーンと名づけてくれた人。わたしにとって、本当にありがたくて、嬉しい出来事だった。
　なんの縁なのか、またしてもホームズに関する名前だったけれど。ホームズには、生涯唯一愛した人がいる。その名は、アイリーン・アドラー。
　ひゅうががいなかったら、わたしの虹の世界での生活は何か違っていたかもしれない。ひゅうがとデイジーは、恋人だった。わたしに名前をくれた大切な人の、大切な人を、殺そうとしている。本当に、わたしはそんなことができるのだろうか。

「……じゃあ」

　結局、できなかった。アイリーンという名前を殺すみたいで。できなくて、悔しくて、悲しくて、なのはに申し訳なくて。どうしようもなくつらいので、自分の教室にこもって、なのはのスマホを見た。
　悪いと思いつつ、自分の悪意に触れた今は、善意に触れたくて仕方ないので、なのはの遺言を読んだ。

　潤へ。
　お元気ですか？私は今のところ元気です。いろいろ言いたいですが、まずは謝らないといけません。勝手にいなくなって、ごめんなさい。戻れなくてごめんなさい。私たちは何故か、十人で殺しあって最後の一人になった人だけが帰れるという、とんでもないものに巻き込まれてしまいました。私には、誰かの命を奪うなんて、できませんでした。潤にもう一度会いたかったです。もっといろんなところに行ったり、いろんなことをしたり。小さいころからの一つだけの夢も叶わないみたいです。幼稚園児のころから、私の夢はお嫁さんでした。そっちはどうなっているんでしょう。私たちは突然いなくなったことになっているんでしょうか。潤はきっと、いろいろ考えて疲れてしまっていると思います。これを読んだあとは、もう難しく考えないでください。私の分まで、幸せになってください。絶対ですよ、幸せになってくれなきゃ毎日夢枕に立ってやりますからね！最後に、一番言いたかったことを。今までありがとうございました。大好きです、潤。

　なのはの、好きだった人。じゅんのことは、わたしもよく知っていた。私が一方的に知っていた。なのはがよく話していたから。じゅんの話をしている幸せそうななのはの顔を思い出して、胸が痛んだ。