episode34秋side ページ36
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吹っ切れたような胡桃に改めてお礼を言って、俺は家に帰るため駅へ向かった。
「……あ」
駅前のスーパーの前を通りかかった時、俺はふと足を止めた。
幸太郎が帰ってくるのは7時半頃だ。
あいつはいつもバイトから帰って来て家で夕飯を食べているが、俺は料理が苦手なので幸太郎がバイトの日はあいつの作り置きか買い食いになる。
手元にはお金もあるし、今俺は可愛い女子力女子として早川を落とそうとしている。
ならば、いつか手作りの食べ物でもあげればあいつの心は俺に傾くかもしれない。
つまり、俺は料理スキルを身につけた方がメリットがあるということだ。
それに、幸太郎にはいつも世話になっている。
家事はほとんど任せているし、そもそも俺が一人暮らしする予定だったところへ幸太郎を巻き込んだのにバイトの割合はほぼ同じ。
あいつは別にいいと言っているが、迷惑ばかりかけてしまっていることに違いないはない。
今日は俺が夕飯を作って、幸太郎に「秋くんも頼れるな」って思ってもらおう。
無理してバイト前に夕飯作らなくていいんだぞ、俺に頼れよって態度で示そう。
こういう時に何を作るべきかは分かっている。
「オムライス、だな」
鶏肉と卵、ケチャップも必要だ。
たまねぎはこの前実家の畑で採れたやつが送られてきたから大丈夫だし……他に何かオムライスに必要なものはあっただろうか。
いや、初めてだし、何も初っ端からプロレベルのクオリティを目指すことはない。
あくまでオムライスが出来れば、それでいいのだ。
「ただいまー」
誰も居ない家に帰ってきて、早速準備を始める。
ご飯は今朝炊いたのが残っているから丁度いい。
深めのフライパンに油を引き、熱する。
鶏肉を細かく切って炒め、ある程度火が通ったらたまねぎを加えてさらに炒める。
ご飯をいれてケチャップと混ぜればチキンライスの完成。
そう、ここまでは問題ではない。
問題は卵の方だ。
小さめの四角いフライパンで卵を焼き、ご飯の上に乗せる。
「げっ」
破けてしまった。
こっちは俺のだな。
さぁ、もう片方の卵を……集中しろ、味は同じと言えど、やはり見た目は大事だ。
「……できた! うん、初めてにしては上出来だろ」
俺はできたオムライスを見て満足げに呟いた。
時計は7時3分前を指している。
幸太郎が帰ってきたら、なんと言うだろうか。
あいつの笑顔を楽しみに、俺は箸を準備した。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時