episode33秋side ページ35
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「じゃあねー」
「おう、後でな」
幸太郎と別れ、約束した通り正面玄関のガラス戸に寄りかかり胡桃を待った。
生徒が出ていく度に出入口から冷たい風が吹き込み、俺の体温を下げる。
冷え性の俺には辛いな、と思いながら、胡桃が降りてくるであろう階段に目を向けた。
体感5分といったくらいだろうか、俺の視界に肩くらいまでの黒髪が入った。
そして、その髪の持ち主である待ち人は俺に言う。
「遅くなってごめんね、行こうか」
「気にすんな」
その後、俺は無事に2台目であるふたば'sスマートフォンをゲットした。
お礼に何か奢るよということで、俺は胡桃が希望した大手ファーストフード店に入店。
2人ともフライドポテトとアイスティーを購入して席に着いた。
「あの、立花くん、実は折り入ってご相談が」
「ん、俺でいいなら」
アイスティーを一口飲んでから、胡桃は話し出した。
「ほら……私、この前幸太郎くんに告白したでしょ?」
「あぁ。そうだな」
「その後は、彼、私の言った通りに今までと同じように接してくれてたんだけど……私の方がそうは行かなくって。告白してフラれたからって、好きっていう気持ちがなくなるわけじゃなかったから。」
目線を下げて切ない表情をした胡桃。
俺はその表情を見て、ポテトを食べる手が止まった。
「まだ好きだから、諦めたくないから、意識してほしくて接しちゃうんだ、私。ダメだよね、今まで通りにしてほしいなんていっておいてさ。……こんなの、迷惑なだけなのに」
相談というか、胡桃はきっとこのことを誰かに聞いて欲しかったのだろう。
彼女は大人しそうだし、もしかしたら告白したことをあの場にいた俺と幸太郎以外誰にも知らせていないかもしれない。
だから俺にしか言えなかったのかもしれない。
そう思うと、俺は胡桃を応援してあげたくなった。
「……迷惑かどうかは、お前が決めることじゃないぞ」
「迷惑がどうか決めるのは幸太郎だ。あいつがお前のことを好きになるかどうかなんて無責任なことは言えないが、あいつお前のこと嫌いじゃないぞ。好きっていう気持ち捨てたらそこで終わりなんだよ。望みが薄くても、捨てたらダメだ。少なくとも、お前が好きでいる分には、別になんの迷惑もないと思うぞ」
そこまで言って俺はハッとした。
「あ、悪い、偉そうに……」
「ありがとう」
「え?」
「ありがとう、立花くん。私頑張るよ」
胡桃は、どこか清々しい笑顔で言った。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時