episode29栞奈side ページ31
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よくある漫画みたいな展開だ。
変な人に絡まれたヒロインを、かっこよく助けてくれるヒーロー。
でも、秋は小さいうえに2対1。
正直、秋が来てくれたからもう安心ね、とはならない。
「なんだよお前、邪魔、退けよ」
「邪魔なのはお前らだろ。高校生にちょっかいかけるとか、いい歳した大人が馬鹿みたいだな」
「んだとてめぇ!」
黒髪の方は黙って見ているが、茶髪の方は喧嘩っぱやいのか秋の挑発にもすぐ乗る。
どうしよう、と南ちゃんを見ると、彼女はアクション系のアニメを見ているような顔をしていた。
言葉を失う。
視線を秋たちに戻すと、ちょうど茶髪の方が足をあげたところだった。
秋はお腹のあたりに蹴りをくらった。
けほっと咳をしてから、冷たい目で顔をあげる秋。
「……お前らに声かける前、警察呼んどいたから」
そう言って見せた秋のスマホには、発信履歴の1番上に110とあった。
茶髪は驚いた顔をしたあと、黒髪に警察が来るだろうと伝えた。
黒髪は苦い顔だ。
「お前がこんなガキに声かけるからだろ……」
「俺が悪いのかよ? そりゃねぇだろ」
黒髪と茶髪は何やら仲間割れのような言い争いをしながら路地の向こうへ歩いていった。
「行ったな。怪我とか大丈夫か?」
「秋、ありがとう、助かった。私は大丈夫だよ」
「立花くんありがとね、かっこよかったよ!」
「かっこいいやつは1発もくらわねぇよ」
秋は苦笑いで腹部についたほこりを払う。
そうだ、蹴られたんだ。
「秋、ごめんなさい……」
大人の男の人に蹴られたのに、最初に私たちに怪我はないかと聞いてくれた。
怪我したかもしれないのは、自分の方なのに。
私のせいで……私が自分であの人たちをどうにか出来なかったから、秋が痛い目に遭ったのだ。
ごめんなさいじゃ、足りないくらいだ。
「なんでお前が謝るんだよ。俺が勝手に来て勝手に蹴られただけだろ」
なのに、秋はそう言って笑うと、私の頭を撫でた。
「あーあ、かっこよく助けてやろうと思ったのにな。ヒーローとは程遠かったな」
何を言っているんだ。
今日の秋は、私にとって充分すぎるくらいヒーローだった。
「……ううん。かっこよかったよ」
「そうそう!」
私も南ちゃんも、そう言って笑った。
秋も、へらっと笑った。
私は、やっぱりその笑顔が好きだ。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時