恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ12)

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第11話始まりの鐘ページ12

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桜が満開に咲き誇る中、メフィストは燐との待ち合わせ場所へ向かっていた。
散った桜の花弁が地面に敷き詰まっており、薄桃色のカーペットのようだ。
日本の四季が生み出す儚さなどを感じ、心を揺さぶらせる桜のなんと風情のあるものか。

「……あれは」

ふと、メフィストの視界に1人の少女の姿が入る。
向こうは本を読むことに夢中になっているようでこちらに気づいてはいない。

言葉を交わすこともなく行ってしまった。
1つのことに集中すると周りが見えなくなるのが女の悪い癖だったことを思い出す。
振り返るが、本を読みながら歩いている女が私に気付くことはない。

私とすれ違ったことなど、わかっていないのだろう。
否、私が見えていないだけで記憶として覚えているかもしれないが。

あの容姿を見間違えるはずがない。

闇よりも純度の高い漆黒の髪は、光の当たり方によって紫色にも見え神秘的だ。
歩くたびにふわりと揺れる長い髪は指の間をさらさらと流れていく程手触りが良い。

メフィスト好みの濃い桃色で、パッチリとした澄んだ瞳。
雪の様に白い肌と、桜の様に淡く色づく頬。
林檎の様に鮮やかな赤い唇。

今咲いたばかりの花の様な生き生きとした可憐さを持ちながらも眩いほど美しい端正な顔。

彼女と3度目の再会を果たした(と言ってもすれ違っただけ)メフィスト。
メフィストを1番驚かせたのは、彼女の右耳を飾っている装飾品だった。
"自分(時)"を象徴するような砂時計の耳飾り(・・・・・・・)。

薄紫色の砂が入っている所を見ると、無意識なのだろう。
メフィストを意識しているのであれば桃色のはず。
だからあれは完全に少女の好みでつけているものだ。

女の生まれ変わりである少女は、私が理事長を務める学園の制服を着ていた。
今年に入って見たのだから新入生だろう。
女は気分屋だが馬鹿ではないから特AもしくはAクラス。
理事長室で今年の女子生徒の資料を探せばすぐ見つかるだろう。

…ああ、今すぐにでも掴むことのできる距離に居ながら触れることもできないなんて。

「チッ。しかし、今は奥村兄弟が優先だ」

父上(サタン)に唯一対抗し得る可能性のあるもの。
青焔魔(サタン)の落胤。
青焔魔(サタン)と人間の混血児である双子。

片方は青い炎を継がなかったが、一方は継いでいる。
はやく、スタートラインに立たせなければ。

物語は始まらない。