Life of BTS はじまりの鐘 (ページ9)

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そこから次々と韓国のグループが日本へと乗り出していった。

日本での活動は、韓国よりも稼げる。
聞こえは悪いが、それが韓国のアイドル業界では必要不可欠な事だった。

韓国のアイドルは日本のアイドルに比べ、実力主義の風潮が強い。
近頃はダンスや歌の実力だけではなく、ビジュアル面や作曲能力も重視されるようになってきた。

そのためか、日本人にとって韓国のアイドルは所謂“完璧”に映るらしい。
K-POPアイドルは、瞬く間に日本人の間でも人気を誇るようになった。

だが、やはりそう容易にはいかないのが現実。

日本と韓国の間には根強い政治問題があり、それは音楽業界にまで影響が及ぶほどだ。
一時期は日本のチャートを独占しつつあった韓国アイドルも、領土問題を機に日本での活動が縮小され、まるで風のように日本から姿を消した。

しかし日本の音楽市場は、韓国の音楽業界にとってはなくてはならないものだ。

SMやYG、JYPといった大手事務所は日本への進出と安定した日本での活動を視野に入れ、デビューメンバーに日本人を加えようと、現地で練習生を募り始めた。

そしてそれは駆け出しの事務所の代表であるパン・シヒョクも同じ。
“防弾少年団プロジェクト”の発足と同時に、かねてから目をつけていたある日本人を練習生としてスカウトしたのだ。

そしてその練習生こそが、今回事件を起こした張本人である。

８人目のメンバーとして、日本人を入れる。
それは『アジアを誇る魅力的なグループを作る』という夢を持つシヒョクにとって、捨てる事の出来ないビジネス的なこだわりだ。

世界に進出するためには、日本は無視できない。

しかし日本人メンバーを入れるのは、そう簡単なことではない。
韓国と比べ、幼少期から長い年月を練習期間に当てるという風習がない日本に、韓国のアイドルとしてやっていけるような実力や魅力を持つ若者は少ない。

ゆえに、例の練習生はお宝同然だった。
シヒョクが連日眠れなくなるのも無理はないだろう。

(もはや悩んでいる暇はない。こうなったら日本人は諦めて……)

「パン・シヒョク代表！」

物思いに耽っていたものだから、届いた声に反応するのにしばし時間を要した。

「……あ、あぁ！ただいま」

「丁度いいとこに帰ってきました！実は……」

彼はパン・シヒョクが代表を務めるBigHitエンターテイメントに務める秘書だ。