Life of BTS はじまりの鐘 (ページ8)

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第１章　白銀ページ8

第1章白銀
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2012年、８月某日。
とある芸能事務所の、本社。

「昨年末、我社の“防弾少年団プロジェクト”が白紙になりかねない事態が起きた」

「メンバー候補が不祥事で逮捕された事件だな」

「彼はダンスも歌も優秀で、ビジュアルもいい。これからのアイドル業界になくてはならない要素が揃っていた。……彼が作った穴を埋める人間が、見つからないんだ」

「彼はもう保釈されているのだろう？連れ戻せばいいのではないか」

「何を考えている。逮捕歴がある人間など……！」

「パン・シヒョク。君はまだこの業界の仕組みが分かっていないようだな。“暗い過去”や“完璧だと思っていた人間の欠点”は、何よりも大衆を惹きつける魅力になる。すべて利用すればいい」

「……あなたに意見を求めた私が馬鹿でした」

本社を出たパン・シヒョクは、大きな欠伸を零した。
デビューが決まっていた練習生が逮捕されてから約半年、彼は眠れない毎日が続いていた。

自社の未来を背負うグループを作る為に発足させた、“防弾少年団プロジェクト”。
原石とも言える数十名の若者を探し出し、練習生として自社に迎えてから大分時間も経った。

グループコンセプトの変更など、自社の未来がかかっているあまり協議が度重なり、なかなか順調に事を運べない。
そんな中で、事件は更なる追い打ちだった。

(このままではデビューがとん挫してしまう……)

付き合いの長い伝手を頼り新たな原石探しにも乗り出したが、目ぼしい人材は見つからない。
そもそも無名な事務所だ。
オーディションを開催したところで、見向きもされない事の方が多い。

(今いる７人でデビューさせるしかないのか……)

現時点で考えている７人のメンバーでも、決して申し分はない。
ただ、パン・シヒョクが８人目のメンバーに拘るのには理由がある。

韓国のアイドル業界は、とても盛んで競争も激しい。
毎年幾つものグループがデビューしては、埋もれて消えている。
韓国の音楽市場の規模の小ささが要因のひとつだ。

数年前から、韓国は音楽市場の規模が世界で２番目に大きい日本への輸出に乗り出している。
そこで大成功を収めたのが『東方神起』や『BIGBANG』だ。

彼等は日本語を覚え、日本の音楽・バラエティ番組に精力的に出演し、韓国の音楽産業に貢献した。